Disc Review

11 Past the Hour / Imelda May (Decca)

11パスト・ジ・アワー/イメルダ・メイ

おととい載せたシャロン・ヴァン・エッテンの盤同様、今朝もひと月くらい前、4月に出ていたのに紹介しそびれていた1枚を。イメルダ・メイの新作です。

イメルダ姐さんといえば、ジェフ・ベックによるレス・ポールへのトリビュート企画でメアリー・フォード役をつとめたのをはじめ、ロニー・ウッドのチャック・ベリー・トリビュートとか、かつて本ブログでも紹介したジェフ・ゴールドブラムのジャズ・アルバムとか、いろいろな局面でゲスト・ヴォーカリストとして、いい感じにレトロで、ルーツっぽい個性を柔軟に発揮してきたアイルランドのシンガー・ソングライターさん。

間にスポークン・ワード系のEP『スリップ・オヴ・ザ・タング』が挟まっていたものの、フル・アルバムとしてはTボーン・バーネットのプロデュースの下、持ち前のロカビリー/カントリー・ロックンロール感覚を全開にした2017年の『ライフ・ラヴ・フレッシュ・ブラッド』以来、久々の1枚ということになる。

今年の1月、ノエル・ギャラガーとロニー・ウッドをゲストに迎えたルーズなロック・チューン「ジャスト・ワン・キッス」が先行トラックとして公開されていて、あ、今回はそういう感じなのかなと思ってたら、ディープでダウナーなバラードから、フォーキーなもの、1980年代ニューウェイヴ的なものまで、相変わらず幅広い魅力を披露。

まあ、従来のロカビリー系路線に比べるとパンチに欠けるというか、爆発力は抑え目ではあるのだけれど。他にも「メイド・トゥ・ラヴ」って曲には同じくロニーに加えて、女性の権利をめぐって闘い続けているアクティヴィストのジーナ・マーティンとドクター・ショラ・モス・ショグバミムが参加していたり。「ドント・レット・ミー・スタンド・オン・マイ・オウン」にはアイルランドのシンガー・ソングライター、ニール・マクナミーを迎えてデュエットしていたり。「ホワット・ウィー・ディッド・イン・ザ・ダーク」にはザ・ラスト・シャドウ・パペッツのマイルズ・ケインが…。

曲によって多彩なゲストも迎えながら、柔軟なところを聞かせている。昔からのファンにしてみると、若干の寂しさと物足りなさを覚えたりするのもまた事実ではありますが、まあ、これはこれでイメルダさんの大切な魅力をより幅広いリスナーに向けてお披露目してくれる方向性なのかも。いずれにせよ、やっぱり気になる、魅力的な存在ではあります。

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