Disc Review

DeLIVErin’ Again: 50th Anniversary Return to the Troubadour / Richie Furay (DSDK Productions)

デリヴァリン・アゲイン/リッチー・フューレイ

バッファロー・スプリングフィールド〜ポコ〜サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドのメンバーとしてもおなじみ、リッチー・フューレイの最新リリースはごきげんなライヴ・アルバムだった。

リッチーは2013年10月に初来日してくれていて。東京2日、大阪1日。毎日2ステージずつ。もちろん見に行った。1回だけだったけど。ステージごとにセットリストもちょっとずつ違っていたようで。あ、別の日にはあの曲やったのかとか、こっちの曲はこのセットでしか聞けなかったのか、やったぜ…とか、悲喜こもごもでありましたが(笑)。

今回のライヴ・アルバムは、あの初来日公演の5年後、2018年11月に米ロサンゼルスの伝説的ライヴハウス《トルバドール》で行なわれた2部構成の公演を収録したもので。リッチーにとっては、かつてポコのメンバーとして同ライヴハウスに初めて出演してから50年目の記念パフォーマンスだったとのこと。

2枚組で。“Still DeLIVErin’”と題されたファースト・セットを記録したCD1は、ソロ時代を中心にバッファロー・スプリングフィールド時代、ポコ時代のレパートリーを交えた作品集。オープニングを飾る「オン・ザ・ウェイ・ホーム」はご存じバッファロー・スプリングフィールド時代のニール・ヤング作品。「ゴー・アンド・セイ・グッドバイ」はバッファローのファースト収録のスティーヴン・スティルス作品。「ドント・レット・イット・パス・バイ」と「エニウェイ・バイ・バイ」はポコのセカンド・アルバムに収められていたリッチー作品。

日本公演にもバンドの一員として一緒にやってきた娘さん、ジェシー・フューレイ・リンチが歌う「ハード・カントリー」は1980年代になってからポコのメンバーになったジャック・サンドラッドが2005年のソロ・アルバム『バイ・マイ・オウン・ハンド』で発表した名曲。ポコは2013年、リッチー不在時代にリリースしたアルバム『オール・ファイアド・アップ』で、ジェシーは2016年のソロ・アルバムで、それぞれ取り上げていた。

「ウィー・ワー・ザ・ドリーマーズ」「ウィンド・オヴ・チェンジ」「サムデイ」は、一時期、バッファロー・スプリングフィールドの再結成が模索されていたころに録音された音源などを集めて2015年にリリースされたリッチーのソロ・アルバム『ハンド・イン・ハンド』より。ソロものとしては、あと「ウェイク・アップ・マイ・ソウル」が1997年の『イン・マイ・ファーザーズ・ハウス』、「レッツ・ダンス・トゥナイト」が2006年の『ザ・ハートビート・オヴ・ラヴ』の収録曲だ。

で、“DeLIVErin’ Again”と題されたCD2。こちらは1971年にリリースされたポコの大ヒット・アルバム『ライヴ・ポコ(DeLIVErin’)』収録曲全曲をオリジナル曲順のまま再現したものだ。これは燃える。もちろん曲順通りなので、ポコのためにリッチーが書いた作品だけでなく、バッファロー時代の「カインド・ウーマン」も「チャイルズ・クレイム・トゥ・フェイム」も、ジム・メッシーナ作の「ユー・ベター・シンク・トゥワイス」も、ティモシー・B・シュミット作の「ヒアー・ザット・ミュージック」もちゃんと全部入っている。「ヒアー・ザット…」にはティモシー自身が客演。自分のことをバンドにスカウトしてくれたリッチーへの感謝の言葉とともに変わらぬ軽快なヴォーカルを聞かせてくれる。

でもって、ラスト、アンコールとしてリッチー在籍時、初期のポコの代表曲「ア・グッド・フィーリン・トゥ・ノウ」をティモシー入りのラインアップで披露して幕。まあ、ラスティ・ヤングのプログレッシヴなスティール・ギター・プレイがないもんで、ちょっと感触は違うけれど、でも、バンドの演奏はしっかりしているし。コーラスもばっちり。リッチーもこのとき74歳だったなんて信じられないくらい溌剌としていて。最高。

『ライヴ・ポコ』のデザインをざっくりパロディにしたジャケットも、あんまり細かく詰めすぎていないところがむしろこの人らしくて悪くないというか…(笑)。

実は先述したリッチーの初来日公演を体験した、そのほんのちょっと後、うちの夫婦と大滝詠一さんとでお食事する機会があって。その昔、はっぴいえんどの時代からリッチーの大ファンであることを公言してきた大滝さんだけに、まだ元気に歌えていたか、ニール・ヤングやスティーヴン・スティルスの曲も歌ったのか、バンドはどうだった…など、その少し前にヤングさんのブリッジ・スクール・ベネフィットの場で実現したバッファロー・スプリングフィールド再結成ライヴの話題なども交えつつ、ご飯を食べながら深夜まであれこれずいぶんと盛り上がったことを覚えている。

その後も変わらずメールでのやりとりは普通にしていたものの、ほんの数ヵ月後、とても悲しい報せが突然届いて。思えば、あれがうちの夫婦と大滝さん、直接会話を交わした最後の機会になってしまったんだな、と。今回出たリッチーの新作ライヴ盤を聞きながら、まあ、思いきり個人的な話で恐縮ですが、なんとも寂しい気分になったり…。

でも、リッチーはとっても元気! この人の持ち前の明るさは、やっぱりかけがえがないなと思う。まだまだがんばってね。

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