Disc Review

Three Chords and the Truth / Van Morrison (Exile/Caroline International)

スリー・コーズ・アンド・ザ・トゥルース/ヴァン・モリソン

実は本作と同じ『スリー・コーズ・アンド・ザ・トゥルース』というタイトルがついたアルバムなり楽曲なりは、ライ・クーダーとかサラ・エヴァンスとか、過去にもけっこうたくさんのアーティストがリリースしてきている。U2がボブ・ディランの「見張り塔からずっと」をカヴァーした際、そんな1行を歌詞に独自に加えたこともあった。

というわけで、この言葉、わりと由緒正しいというか。日本ではあまり有名ではないかもしれないけれど、米音楽界では知らぬ人がいないというカントリー系の偉大なソングライター、ハーラン・ハワードが1950年代、優れたカントリー音楽とは何か? という問いに対する答えとして提示した至言なのだった。

3つのコードと真実。

いいすね。かっこいい。カントリーに限らず、優れたブルース、優れたゴスペル、優れたロックンロール、優れたフォークなど、そのすべてにあてはまる永遠の真理だろう。シンプルさと、それゆえの奥深さ、ということかなとも思うのだけれど。今、その至言を誰よりも正当に体現し得るであろうパフォーマーこそが、この人、ヴァン・モリソンだ。

すでにキャリア半世紀以上。昨年、通算40作目のアルバム『ザ・プロフェット・スピークス』をリリースした北アイルランド出身、孤高のシンガー・ソングライターだが。今なお活動の勢いは衰え知らず。新作、出しました。ここ4年でこれが6作目ということになる。とはいえ、ここ数作はだいたいアルバムの半分がR&Bやブルース、ジャズのカヴァーというツクリだったけれど、今回はトラディショナル1曲を除いて全てヴァン・モリソン作・プロデュースによる新曲。こういう、ソングライターとしてのモリソンのことも存分に味わえる構成は久々だ。

自作ばかりだからだろうか、太くファンキーな歌声の魅力だけでなく、それと裏腹に繊細でシニカルなモリソンの内省も大きくフィーチャーされた仕上がり。ライチャス・ブラザーズのビル・メドレーと、なんとも荒っぽく、しかしさすがに濃い英米ブルー・アイド・ソウル・デュエットを聞かせる必殺の「フェイム・ウィル・イート・ザ・ソウル」なんて、もうタイトルからして辛辣。ファースト・シングルとして先行公開されていた「ダーク・ナイト・オヴ・ザ・ソウル」の切なく美しい表現とかも胸をうつ。

他の曲もみな、ブルース、ゴスペル、ジャズ、R&B、ロックンロール、スキッフル、カリプソ、ケルティックなど彼が愛する多彩なルーツ音楽からの影響を、もはや自らの身体にたたき込まれた動かぬ持ち味として自然体で炸裂させたものばかり。別に3コードの曲だけで構成されたアルバムというわけではなく、そういう心意気で書かれ歌われた曲たちということ。気心知れたツアー・バンドの面々に加え、かつて『アストラル・ウィークス』でもプレイしたことがあるアコースティック・ジャズ・ギタリスト、ジェイ・バーリナーが、感動的なオープニング・チューン「マーチ・ウィンズ・イン・フェブラリー」をはじめ6曲に参加している。

ホンキー・トンク・カントリーと南部R&Bのテイストが交錯する3拍子ナンバー「バッグズ・アンダー・マイ・アイズ」でモリソンは“旅にはうんざりだ/このメリーゴーラウンドから降りなきゃ/でも、俺は今も続けている/いつになったら俺は賢くなるんだ…”みたいなことを、自虐的、かつ、ちょびっとコミカルに歌っている。ただ、なんかこの人に歌われちゃうと妙に真に迫って。しかも、続くアルバムのクロージング・チューン「デイズ・ゴーン・バイ」は、もう「蛍の光」まで歌い込まれた寂しげな曲だったりするもんだから。えー、本当にもうやめたいのかも、とか、結局来日は実現せずに終わるのかな、とか、勝手に不安になっちゃったり悲しくなっちゃったりするのだけれど。

いやいや。そうしたもろもろの逡巡を真っ向から丸ごと抱え込みながらゴツゴツ生き続けていくのがヴァン・モリソンって人なんだろうな、と。そんな圧倒的な事実を改めて思い知らせてくれた新作アルバムだった。ちなみに、音源のダウンロード販売はあるけれど、サブスクでのストリーミング配信は今のところないみたい。それがモリソンさんからのメッセージなんだと受け止め、フィジカル、買いました(笑)。

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