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ウェイティング・フォー・コロンブス:スーパー・デラックス・エディション/リトル・フィート

またすっごいやつ、出ました。リトル・フィートが1978年にリリースした傑作2枚組ライヴ・アルバム『ウェイティング・フォー・コロンブス』のスーパー・デラックス・エディション。CD8枚組というボリュームでの登場だ。まだオーダーしたブツが手元に届いていないのだけれど、ストリーミングも始まったので早々にご紹介です。

リトル・フィートって、名前だけは知ってるんですけど、まだ聞いたことがないです。どのアルバムから聞いたらいいでしょう…とか、若い世代の方からたまに質問されることがある。そうすると『ディクシー・チキン』かなぁ、『ラスト・レコード・アルバム』かなぁ、とか思いきり悩むわけですが。

でも、いろいろ悩んだあげく、ぼくはこのライヴ『ウェイティング・フォー・コロンブス』を推薦することが多い。

というのも、リトル・フィートというバンド、ロック・ヒストリーにがっつり名前を残してはいるわりに、ロウエル・ジョージを中心に動いていたオリジナル活動期、あまりまともなレコード・セールスを上げられずじまいで。ツアーを繰り返す中、強力なライヴ・バンドとしての定評をマニアックなロック・ファンの間で確立してはいたものの、それがなかなか一般的な人気とか知名度とかにはつながらず。そのせいで一時活動が停滞。解散の危機すらあった。

が、そんな中、ついに生まれたヒット作が本ライヴだった。これこそがロウエルが在籍していたオリジナル・フィートのアルバム中、最も成功した作品。1978年2月にリリースされ、全米アルバムズ・チャート18位まで上昇しゴールド・アルバムを獲得している。

今から45年前の1977年夏に行なわれたツアーの記録。英ロンドンのレインボー・シアターと、米ワシントンDCのリズナー・オーディトリアムで収録した複数回のライヴ音源から選りすぐったパフォーマンスで構成されたLP2枚組だった。もともとは3枚組が予定されていたそうだけれど、レコード会社からダメ出し食らって2枚組に縮小されたらしい。確かに、これ3枚組でリリースしていたら、価格的なことも含めてまた売れない隠れた傑作になっていたかも。

過去のすべてのスタジオ・アルバムからまんべんなく選曲。そのどれもが大胆なライヴ・アレンジを加えられ、いきいきと、瑞々しく生まれ変わっていた。フィートの底力を思い知った。過食やドラッグ禍による奇行でバンドを思いきり戸惑わせ振り回していたロウエル・ジョージもこのアルバムでは見事復調。演奏もいい。歌もいい。やはり並の男じゃないことを証明してみせた。うれしかった。ゲスト参加していたタワー・オヴ・パワー・ホーン・セクションもむちゃくちゃ強力。

ちょうどこのアルバムが出たころ、フィートは待望の初来日公演を果たした。当初、1978年3月に来る予定だったのが、ロウエルの体調不良のために7月になって。でも、7月にはちゃんとロウエル入りのラインアップでやってきてくれて。タワー・オヴ・パワー・ホーン・セクションはいなかったけれど、最強のメンバー6人によるごきげんにスリリングなステージを見せつけてくれた。忘れられない。本当に素晴らしかった。アンコールで矢野顕子さんが出てきてロウエルとデュエットしたのもなんだか楽しかったなー。

とはいえ、やはり曲によってステージに出たり出なかったり、気まぐれな動きを繰り返すロウエルの様子が気になったのも事実。ずいぶん太っちゃっていたし。その姿を見ながら、ふつふつと沸き上がってくるなんともイヤな予感を禁じ得なかった。で、ほどなくその予感は的中してしまうことになるわけだけれど。それはまた別の話か。

ということでそんな、ある意味フィートの最盛期を記録した傑作ライヴのスーパー・デラックス・エディション。以前、2002年にライノ・レコードが本作の拡張エディションをリリースしたことがあって。そのときはオリジナルのLP2枚組の音源に加えて、1981年のコンピレーション『ホイ・ホイ!』で初お目見えした3曲を含む10曲のボーナストラックが追加され、幻の3枚組の感触を想像させてくれていたのだけれど。

今回はそんなもんじゃなく。なんたってCD8枚組。ディスク1と2にオリジナル・アルバムの最新リマスター・ヴァージョンを収めて。ディスク3以降に、英マンチェスターのマンチェスター・シティ・ホールでの7月29日公演、英ロンドンのレインボー・シアターでの8月2日公演、米ワシントンDCのリズナー・オーディトリアムでの8月10日公演という3つの未発表コンサートの模様をそれぞれ2枚組ずつにまとめて追加。

まるまる今回が初お目見えのマンチェスター公演以外は、それぞれ1曲ずつ2002年の拡張エディションに収められていたものもダブって含まれています。ただ、なんかサブスクのストリーミングのものは特に収録日とかのクレジットがけっこう混乱していて、まだぼくはヴァージョンをよく整理できていません。その辺、ブツがそろそろ届くはずだから、届いたあとでちゃんとチェックしながらじんわり聞き進めていくのもまた楽し…みたいな?

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