99セント・ドリームス/イーライ・ペーパーボーイ・リード
爆裂ホワイトR&B野郎、イーライ・ペーパーボーイ・リードのうれしい最新作! 悪かろうはずもなく、収められた12の自作新曲すべてがヴィンテージR&Bファンに最上級の快感を約束してくれる。ごきげん!
ジェイソン・イズベル、マーゴ・プライス、ジョン・プライン、アンダーソン・イースト、ドライヴ・バイ・トラッカーズらとのレコーディングでおなじみ、メンフィス・サウンドの伝統を現在に受け継ぐ頼もしい男、マット・ロス=スパングがプロデュース&エンジニアリングを担当。録音場所はもちろん、ロス=スパングの根城でもあるメンフィスのサム・フィリップス・レコーディング・スタジオ。
自らのルーツのうち、ゴスペルに焦点を絞った2016年の前作『マイ・ウェイ・ホーム』同様、ルーツ・ロック〜アメリカーナ・ファンの強い味方、Yep Rocレコードからのリリース。通算では6作目。今回はより幅広く、60年代メンフィス・ソウルはもちろん、シカゴものもデトロイトものも、ファンキーなアップものもスウィートなミディアムものも泣けるスロウものも、すべてをいいバランスで共存させた仕上がりだ。
5曲が3分以内。4分超えは1曲のみ。残る6曲が3分台といういさぎよい曲の尺もたまらない。3管ホーン・セクションを含むバック・バンドも、だいぶ顔ぶれは変ったものの、ごきげんに躍動しているし、メンフィスのリジェンダリーなヴォーカル・グループ、ザ・マスカレイダーズも参加していい雰囲気だし。このブログでも紹介したテデスキ・トラックス・バンド、ニック・ウォーターハウス、ドゥラン・ジョーンズ&ジ・インディケイションズあたりがお好きな方には問答無用でおすすめしたい1枚です。
過去にこだわる姿勢に対してネガティヴにとらえる向きもなくはないのだろうけれど、時流に対して毅然と背を向ける姿勢というのは、それはそれでむしろポジティヴとも言えるわけで。このアルバムに充満するエネルギーを、ぼくは前向きに全力で楽しみますよ。