Disc Review

The Band (50th Anniversary Super Deluxe Edition) / The Band (Capitol/Universal Music)

ザ・バンド(50周年記念スーパー・デラックス・エディション)/ザ・バンド

最近、純粋な新作の紹介をあまりしていない気が…(笑)。

年末に向けて、とにかく今年のうちに出しておかないと格好が付かない50周年、あるいは40周年、中には45周年…なんて半端なものまで含めた周年記念再発盤が続々駆け込みでリリースされている感じで。そっち追っかけているだけで、もう手一杯、みたいな。

でも、仕方ない。今年周年を迎える往年の超名盤たちの超すごい再発盤がどんどん出ちゃうのだから。今の時代の音楽家は大変だなぁ。そういう超名盤と常に並列で闘わなければいけないのだから。特にストリーミング時代、かつてのように“廃盤”という形で旧譜がマーケットから姿を消してくれないわけだし。

まあ、それはともあれ。

これも絶対見逃せない50周年記念再発。ザ・バンドが1969年にリリースした傑作セカンド、いわゆる“ブラウン・アルバム”の拡張エディションの登場だ。去年出たファースト『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』の50周年版と同趣向。1CDもの、2CDもの、2LPものなど、多彩なフォーマットで出るのだけれど。

いつものように、いちばん豪勢なのを紹介すると。2CD+2LP+7インチ・アナログ・シングル+1ブルーレイという混合6枚組に、貴重な写真やていねいな新ライナーなどを満載したブックレットを添えて、豪華なパッケージに収めた“スーパー・デラックス・エディション”。内訳は——

2CDのディスク1には、名匠ボブ・クリアマウンテンが新たに最新ステレオ・リミックスをほどこしたオリジナル・アルバム収録曲に、初期テイク、別テイク、別ミックスなど貴重な未発表ボーナス・トラック6曲を追加。ディスク2には、1969年8月、伝説のウッドストック・フェスティヴァルに出演した際のライヴ音源11曲に、2000年リマスターCDに入っていたボーナス・トラック7曲を追加。

2LPというのはオリジナル・アルバム収録曲の新リミックスを45回転高音質アナログLP2枚に振り分けたもの。7インチ・シングルは「ラグ・ママ・ラグ」と「アンフェイスフル・サーヴァント」のカップリング。ブルーレイにはCDに入っている全音源のハイレゾ版と5.1chサラウンド・ミックス、および1997年に制作され単体でビデオ発売もされていたドキュメンタリー映像『クラシック・アルバムズ〜ザ・バンド』を収録。

おなかいっぱい。もう食べられないよぉ…的な(笑)。

で、その中から、CDのディスク1のみの1CDもの、ディスク2も加えた2CDデラックス・エディション、LPのみの2LPものなど、バラ売りのフォーマットもいろいろ。先述した通り、この後も気になるボックスセットが相次ぐだけに、ここはリーズナブルに2CDあるいは1CDで乗り切るのもありか、とは思う。ちなみに国内盤として出るのは2CDデラックスと、全部入りスーパー・デラックス。スーパー…のほうの発売はだいぶ遅れて来年1月10日になるそうです。

去年の『…ビッグ・ピンク』同様、ボブ・クリアマウンテンのリミックスはすごく好感が持てる仕上がりで。オリジナル・ミックスの味を尊重しつつ、今の耳にも無理のない常識的な形に音像の定位を見直し、さらにボトムの存在感をがっしり安定させている。

ご存じの通り、このアルバムはロサンゼルスにあったサミー・デイヴィス・ジュニア所有の邸宅をスタジオ代わりにしてレコーディング作業がスタート。プロデューサーのジョン・サイモンともどもその邸宅に住み込みつつ、リラックスした環境のもとで9曲を仕上げたところで、諸事情からニューヨークのヒット・ファクトリーにスタジオを移してさらに3曲を録音。オリジナル・ミックスではその両者で少々音の感触が違っていたものだけれど、その辺の違和感は今回すっかり解消されている。4トラック・マルチ中心に録音されていた『…ビッグ・ピンク』に対し、本セカンドは8トラック・マルチ・レコーディングだったようで。作業しやすかったかも。

ニューオーリンズ的なホーン・セクションもフィーチャーされたグッド・オールド・タイミーなデキシー調サウンドに、引きずるような南部ソウル・ヴォーカルが合体した「ロッキー越えて(Across the Great Divide)」、カントリーふうのフィドルに彩られながら狂気のホンキートンク・ピアノが暴れまくる「ラグ・ママ・ラグ」、南北戦争に題材を求めた感動的な「オールド・デキシー・ダウン」、当時としてはまだ珍しかったクラヴィネットをいち早く駆使したファンキーなリフとタイトなドラムをバックに従え、なんとヨーデルまで飛び出す「クリプル・クリーク」、スタックス系のヘヴィなソウル・フレイヴァーに満ちた「ジェミマ・サレンダー」、牧歌的なフラット・マンドリンとアコーディオンの響きが印象的な「ロッキン・チェアー」、そして文句なしの傑作「キング・ハーヴェスト」など。

激動の1960年代後半、不安と幻想とが渦巻く時代の気分に振り回されながら、多くのアメリカ人がふと忘れかけていた様々な伝統と遺産を、サウンド的に、メロディ的に、歌詞的に、あるいは精神的に力強く甦らせようとした楽曲群がこの1枚のアルバムにぎっしりと詰まっている。

そんな大傑作の魅力を多角的に味わうことができる今回の50周年記念エディション。やっぱザ・バンドはすげぇや。ただ、今回も収められているのが新規リミックス版だけで。これ、いつも思うのだけれど、どうなんだろう。ジャイルズ・マーティンが手がけるビートルズの50周年リミックス・シリーズもそうなのだけれど、ブルーレイならオリジナル・ミックスのハイレゾ版を入れても余裕なんじゃないかなぁ。

どうせリマスター盤はもう持ってるでしょ…と、そういうことなんだとは思うけれど。ケチケチしないで入れといてくれればいいのに、と、いつも思います。

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