Disc Review

Washington Square Memoirs: The Great Urban Folk Boom 1950-1970 / Various Artists (Rhino)

ワシントン・スクエア・メモワール~アーバン・フォークの全て

今年の6月に出た箱で。そのときは取り上げ損ねていたのだけれど。最近、Pヴァインから日本語抄訳ブックレットを付けて国内配給されたので、ここで改めてピックアップさせてもらいます。

1947年録音のウッディ・ガスリーの音源から70年のラウドン・ウェインライトⅢ世の音源まで、ワシントン広場~グリニッチ・ヴィレッジ周辺で人気を博したフォーク・サウンドを年代順に詰め込んだブックレット型CD3枚組。ロックに比して一見保守的と思われがちなフォークが、実はとてもロックしロールしている音楽であったことを再確認させてくれるうれしい仕上がりだ。

確かにこうしたフォーク・リヴァイヴァル~フォーク・ソング・ブームは当時のカレッジ・シーンとの密接なつながりの中で発展を続けたわけで。それは50年代、ハイスクールのティーンエイジャーたちのもとで爆発し成長を続けていたロックンロールとは対照的ともいえる動きだ。実際、キングストン・トリオとか、ピン・ストライプのアイヴィ・リーグふうのシャツをきちんと着て、髪も短く整えて。けっして一般のロックンローラーのように、服装だけで大人の機嫌をそこねるようなものではなかった。音楽を伝えるメディアにしても、あくまでシングルを中心に作り手も受け手も動いていたロックンロールとは違って、大方のフォーク・アーティストはアルバムで自分たちを主張していた。

まあ、フォークの父と呼ばれるピート・シーガーが、50年代、マッカーシーらのアジテーションのもと高まっていた反共運動の魔手にかかるなど、実はフォーク・ソングも保守派から不当な弾圧を受けていた。そういう弾圧を受ける中で、もともとは史実に基づいた素朴な民謡などをベースに、それを現代ふうにアレンジするという手法がメインだったフォーク・シンガーたちが徐々により時事的/社会的/政治的な問題や出来事を取り上げるようになっていった。そんなふうに弾圧を受けたり、“何かに対する反抗”というイメージを持っていた点は、ロックンロールとフォーク・ソング、両者に共通するものだけれど。こと音楽に限った場合、乱暴に言ってしまえば、子供のロックンロール、大人のフォーク・ソング、とそんな感じだった。ロックンロールの反抗が感覚的な、生理的なものだったのに対し、フォーク・ソングにとっての反抗はより理性的、観念的なものだったと言うことができるかもしれない。

が、かつてハイスクール時代にロックンロールの衝撃を受けて、その後60年代、大学生に成長してからフォーク・ソングの世界へ飛び込み、両者を有機的に結び付ける大きな役割を果たした男が現われた。ボブ・ディランだ。そんなディランの曲(「ブーツ・オヴ・スパニッシュ・レザー」)をディスク2の11曲目という、ボックス・セット全体のど真ん中に置いて構成されているのも、このボックス・セットの興味深いところ。ビッグ・ビル・ブルーンジー、シスコ・ヒューストン、ウィーヴァーズ、サニー・テリー&ブラウニー・マギーといったルーツ系の人たちの音源から始まり、キングストン・トリオ、オデッタ、ランブリン・ジャック・エリオット、デイヴ・ヴァン・ロンクなどを経てPPM、ディラン、ジョーン・バエズ、さらに60年代後半に登場してきたエリック・アンダースン、ティム・ハーディン、フレッド・ニール、ティム・バックリー、ポール・シーベルら新感覚派まで。重要どころは総まくりだ。それぞれの選曲も的確。ニュー・シティ・ロスト・ランブラーズやホーリー・モーダル・ラウンダーズ、ジム・クウェスキンら、グッド・オールド・ミュージックをそれぞれのやり方で発掘していた連中の音源もしっかり盛り込まれていて楽しい。

グリニッチ・ヴィレッジ系フォーク・シーンの歴史をコンパクトにおさらいした英文ライナーもかなり面白い。1アーティスト1曲ごとに、関係者のコメントを交えながら綴った曲目解説もためになる。アーティスト名鑑として、名曲集として、手軽に楽しめる。


で、いよいよ開催までひと月を切ったブライアンの来日メンバーおよび公演スケジュールです。

Brian Wilson: Vocals, Keyboards
Jeff Foskett: Vocals, Guitar
Bob Lizik: Bass
Paul Mertens: Sax, Horns
Jim Hinds: Drums
Andy Paley: Percussion, Vocals, Guitar
Darian Sahanaja: Keyboards, Vibe, Vocals
Probyn Gregory: Vocals, Guitar
Nick Walusko: Vocals, Guitar
Taylor Mills: Vocals
Scott Bennet: Vocals, Keyboards, Vibes, Percussion

東京: 2001年9月20日(木)
東京国際フォーラムホールA
問い合わせ: プライムディレクション 03-3408-9595

東京:2001年9月21日(金)
東京国際フォーラムホールA
問い合わせ: プライムディレクション 03-3408-9595

名古屋: 2001年9月22日(土)
愛知県芸術劇場大ホール
問い合わせ: サンデーフォーク 052-320-9100

福岡: 2001年9月24日(月)
福岡サンパレス
問い合わせ: ブレインズ 092-771-8121

大阪: 2001年9月25日(火)
大阪厚生年金会館
問い合わせ: キョードー大阪 06-6233-8888

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