Disc Review

The Studio Albums 1967-1974 (6LP) / Traffic (UMe/Island)

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TRLPBox

ザ・スタジオ・アルバムズ 1967〜1974 (6LP)/トラフィック

ロックンロールとかR&Bとか、米国生まれの音楽に魅せられた異国の音楽家がそれら憧れの対象にどう立ち向かうか、と。これは大きな命題で。もちろん“異国”でなく“異世代”でも“異人種”でもいいんだけど。その答えを求め多くのアーティストが試行錯誤を繰り返してきた。

ローリング・ストーンズやヴァン・モリソンのように生まれ育ちの違いをとりあえず顧みず憧れの対象に向かってがむしゃらに突進、やがて超えられぬ壁にぶちあたり、再度自らの足下を見つめ直して独自の世界観を構築するに至る連中もいる。あるいは中期以降のビートルズのように、自分の内にある多彩な要素をあらかじめ冷静に解析し異質なものと融合、新たな音世界を作り上げる連中もいる。

トラフィックも後者の方向性の下、ある種の理想型というか、モデル・ケースというか、そんなアプローチを聞かせたバンドだった。

中心メンバーのスティーヴ・ウィンウッドの場合、トラフィック以前、スペンサー・デイヴィス・グループの一員だったころはむしろ前者。文化の違いを勢いで乗り越えんと憧れのR&Bに向かってストレートな爆走を繰り広げていた。が、67年にトラフィックを結成後は後者。もちろんバンド内にジム・キャパルディやデイヴ・メイソンら多才/多彩な“他者”が存在していたことも大きい。当時の音楽シーンを賑わしたアシッド、サイケといった奔放なコンセプトからの影響もあっただろう。

ともあれ、その後ソロに転じヴァン・モリソンと並ぶ独自の“魂の音楽”へ辿り着くことになるウィンウッドにとって、この時期の試行錯誤は重要だったはずだ。

と、そんなトラフィックのUK版オリジナル・アルバム群のアナログLPボックスがリリースされた。結成50周年記念とか謳われているけれど、結成って1967年だから、けっこう間抜けに時期を外している感、なくもないです(笑)。アナログLP6枚組。オリジナル・テープよりリマスターされ、ジャケットはゲートフォード・スリーヴ、レーベルはピンク・アイランド。貴重なファクシミリ・プロモ・ポスター入り。

含まれている作品としては、67年の記念すべきファースト『ミスター・ファンタジー』、英国フォーク味とサイケ味とジャズ・ロック味が絶妙に融合した68年のセカンド『トラフィック』、デイヴ・メイソンとスティーヴ・ウィンウッドが離脱した活動休止期を経て、ウィンウッドが復帰、スワンプ色も強めつつ制作された70年の再始動作『ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』、ジム・ゴードン&リック・グレッチがリズム隊として加わった71年の『ザ・ロウ・スパーク・オブ・ハイヒールド・ボーイズ』、マッスル・ショールズのデヴィッド・フッド&ロジャー・ホーキンスが参加した73年の『シュート・アウト・アット・ザ・ファンタジー・ファクトリー』、そして74年のラスト・アルバム『ホエン・ジ・イーグル・フライズ』。

アメリカで独自編纂された68年の米版ファーストは含まれず。なもんで、「ペイパー・サン」「ホール・イン・マイ・シュー」「スマイリング・フェイジズ」といったUKオリジナル・アルバム未収録シングル音源とかは本ボックスでは聞けない。残念。そのあたりの音源を詰め込んだホーナスLPを1枚オマケに付けるとか、なんならシングル盤として復刻して同梱するとかしてくれればいいのに…。さらに、“スタジオ・アルバムズ”と銘打っているだけに、メイソンとウィンウッドの離脱期に未LP化曲やライヴ音源などを集めて編纂された69年の半ライヴ盤『ラスト・イグジット』、メイソンが一時的に復帰して収録された71年のライヴ『ウェルカム・トゥ・ザ・キャンティーン』、73年のライヴ『オン・ザ・ロード』もなし。てことで、『ラスト・イグジット』収録の「シャンハイ・ヌードル・ファクトリー」「メディケイテッド・グー」あたりも聞けない。

トラフィックの場合、精密に復刻されたミニチュア紙ジャケット仕様によるCD再発とかもあって。そちらはUK盤のみならずUS盤もライヴ盤もリストアップされていたうえ、ボーナス・トラックとかもふんだんに入っていて。そっちで揃えたからいいや、みたいな方も少なくないとは思う。加えて、今回のアナログLPボックス、特に新しいライナーが付いているわけでもないし。なんか、せっかくアナログ・ボックス出すのにもったいないなぁ。

と、まあ、文句たらたらではありますが。やっぱりUK版オリジナルLPで一気に全盤揃えられるというのは魅力なのだ。触手がびんびん動くのだ。もはや、音を聞くだけなら定額ストリーミングで聞き放題だもんね。やっぱブツですよ、ブツ。でかい盤とジャケットを触ってナンボ、みたいな。そんな旧世代音楽リスナーの性癖を狙い撃ちし続けるレコード会社の策略にまんまとハマりながら右往左往する私たち。やつらの思うつぼ。ああ…。

ちなみに半年後、通常アナログ盤がバラで発売予定だそうです。

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