Disc Review

Goodbye Girl / David Gates (Warner Music Group/X5 Music Group)

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DGGG

グッバイ・ガール/デヴィッド・ゲイツ

Apple Music や Spotify でニュー・リリースを検索しながらあれこれ流し聞きして楽しんでいたとき、ふと出くわしたのが、これ。具体的にいつリリースされたものかは判然としないのだけれど、ざっくりしたクレジットを眺める限り、今年編まれたものらしく(こういう簡単なクレジットですらわかりにくいのがデジタル配信最大の弱点だなぁ)。以前、こちらで紹介したジミー・ウェッブのベスト同様、デヴィッド・ゲイツがワーナー/エレクトラに在籍していた時期の音源群からセレクトされた20曲入りベストだ。

フィジカルの発売はなく、デジタル配信のみっぽい。特にここでしか聞けないレア音源があるわけでもなく、そういう意味では新たなプレイリスト配信みたいなもの。この人、ソロ名義ではエレクトラにアルバム4枚(というか、3作目が半分旧作からのセレクションによるベストだったので、3枚半?)しか残していないから、別に全部揃えても大した手間ではないのだけれど、これをきっかけに手軽にデヴィッド・ゲイツの魅力に深くハマってくれるファンが増えればうれしいかも。

デヴィッド・ゲイツは70年代、ブレッドというポップ・グループでの活躍がいちばんおなじみだろう。が、彼の場合、ブレッドの一員としてデビューした段階ですでに中堅。60年代アタマからハリウッドの音楽シーンでたくさんの裏方仕事をこなしてきていた。40年、オクラホマ州タルサ生まれ。オーケストラ・ディレクターをつとめる父とピアノ教師の母との間で、子供のころからバイオリンやピアノに親しみながら育った。かのレオン・ラッセルと同郷で、ハイスクール時代、二人でローカル・ダンス・バンドを組んだこともあるのだとか。ラッセルの妹とデートしたこともあるという。そのころまでにゲイツはギター、ドラム、オルガンなどを弾きこなすマルチ・プレイヤーになっていた。

61年、ゲイツ一家はロサンゼルスへ引っ越し。以降、セッション・マンとして、ソングライターとして、アレンジャーとして、本格始動した。64年初頭にはガール・グループ、ザ・マーメイズに自作曲「ポプシクル・アンド・アイシクルズ」を提供(全米3位)したのをはじめ、グレン・ヤーブロー、モンキーズ、キャプテン・ビーフハート、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド、エルヴィス・プレスリー、ベンチャーズ、ビーチ・ボーイズ、デュアン・エディ、ボビー・ダーリン、マール・ハガードなど、この時期、彼が関わったレコーディング・セッションは実に多彩かつ膨大だ。

と、そんな中、ゲイツはプレジャー・フェアというバンドのアルバムをプロデュース。そこのメンバーのひとり、ロブ・ロイヤーと意気投合し、さらにロイヤーとソングライティング・チームを組んでいたジェイムス・グリフィンも迎え、3人でブレッドを結成。69年にレコード・デビューを果たした。ファースト・アルバム『ブレッド』は全米アルバム・チャートの127位にランクされただけで終わったが、翌70年にリリースしたセカンド・アルバム『オン・ザ・ウォーターズ』からシングル・カットされた「二人の架け橋(Make It With You)」が全米1位に輝く大ヒットを記録。デヴィッド・ゲイツならではの洗練されたメロディと美しいコード進行が一躍注目を集めることになった。

ぼくも思いきりハマった。ゲイツさんの巧みなメロディ作りのセンスにはもちろん、アコースティック・ギターの5弦の開放をずっと鳴らしたまま、1〜4弦でAmaj7とBm7/Aを繰り返すとか、そういう画期的なギター・コードの使い方にもやられた。5弦と2弦と1弦の開放をずっと鳴らしたまま、4弦と3弦で美しいラインを作りながら下降していく「イフ」って曲の展開も泣けた。高校生のころ、えんえんコピーしまくったものだ。懐かしい。

と、そんなブレッドでの名声を背景に、デヴィッド・ゲイツは73年にソロ・デビュー。いや、実はブレッド以前、精力的に裏方仕事に勤しんでいた60年代にも、いくつかのレコード会社からソロ歌手としてまったくヒットしなかったシングルを15〜6枚リリースしているので、正確には73年はソロ・アルバム・デビュー年と言うべきかもしれないけれど。ともあれ、それから70年代いっぱいまで、エレクトラ・レコードで前述した3枚半(笑)のソロ・アルバムをリリース。それらから新たに編まれたのが本コンピということになる。

ニール・サイモンが脚本を手がけ、リチャード・ドレイファスが主演した映画『グッバイ・ガール』の主題歌として77年に全米15位まで上昇した表題曲をフィーチャーしているけれど、全体の選曲的にはそれ以前、73年と75年に出た初期2枚のソロ・アルバムからの楽曲が中心。特にファーストからは全9曲中8曲入っている。あるいは、ファーストやセカンドからピックアップされた曲も含めて構成された77年の半ベスト的な同名サード・アルバム『グッバイ・ガール』の拡張エディションと考えたほうがいいのかもしれないけれど。

いずれにせよ、瑞々しさと熟練感とが絶妙のバランスで共存していた70年代のデヴィッド・ゲイツの魅力を気軽に、手っ取り早く体験できるコンピではあります。良質な70年代MORの代表。やっぱこの時期のデヴィッド・ゲイツはシンガーとしてもソングライターとしても無敵です。

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