Disc Review

Blinded by the Light (Original Motion Picture Soundtrack) / Various Artists (Columbia/Legacy)

投稿日:

ブラインデッド・バイ・ザ・ライト(オリジナル・サウンドトラック)/ブルース・スプリングスティーン、ペット・ショップ・ボーイズ、a-ha ほか

今年の1月、サンダンス映画祭でプレミア公開され話題になった英国映画『ブラインデッド・バイ・ザ・ライト』。いよいよ今月からは英米で一般公開もスタートした。とはいえ、日本では映画自体まだ見ることができていない段階。なので、詳細についてはぼくも何ひとつ情報を持っていない状態なのだけれど。早々とサウンドトラック・アルバムだけ買っちゃったので(笑)、わかってる範囲でご紹介です。

パキスタン生まれで、現在英国でジャーナリスト/ドキュメンタリー作家として活動しているサーフラズ・マンゾア(で、読み方いいのかな? Sarfraz Manzoor)の回顧録『Greetings From Bury Park: Race, Religion and Rock n’ Roll』を下敷きに、マンゾアさんの若きころと思しき主人公がブルース・スプリングスティーンの音楽に大いなる刺激を受けながら成長していく姿を描いたコメディ・タッチのほろ苦系青春映画らしい。

舞台は1987年、サッチャー時代の英国。パキスタンから移住してきた主人公の少年が、母国とは異質な文化のもと、親ともわかり合えず、学校にもうまくなじめず、苦難に満ちた青春の日々を送っていて。けれどもそんな中、クラスメイトから借りたスプリングスティーンの『闇に吠える街』と『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』のカセット・テープが、少しずつ彼の人生を変え、彼は自らの表現を手にするために作家を目指し勇気ある歩みを進めていくことになる…と。身勝手な想像も含めて(笑)説明すると、そんな感じか。

監督は『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ。脚本はマンゾア自身。まだYouTubeで予告編をざっくり見ただけなので、まじ、内容を正しく受け止められているのかどうか、さっぱりわからないけれど。米国白人であるブルース・スプリングスティーンの歌声から、異国・異人種・異宗教の音楽ファンがいかなるメッセージをいかなる形で受け取るのか、と。そういう切り口で接すると、われわれ日本人にもけっこう意味深い1作なのかもと思う。アルバム『ザ・リヴァー』を聞きながら、“この男がわれわれのような者のために歌ってくれていると思うのか?”と半ば怒りながら詰め寄る父親に対して、主人公は毅然と、“でも、彼は確かにぼくに向かって語りかけている”と告げる。しびれる。

予告編の途中、ネルシャツの袖を切り落としているシーンとかも出てくるけど。ちょっと笑えるような、いや、身につまされるような…(笑)。そうしたくすぐりも含めて映画のほうも楽しみ。

で、サウンドトラックのほうは、当然、基本的にブルース・スプリングスティーンの作品集。映画のタイトル・チューンでもある「光で目もくらみ」をはじめ、「バッドランド」「ハングリー・ハート」「ダンシング・イン・ザ・ダーク」「カヴァー・ミー」「プルーヴ・イット・オール・ナイト」「明日なき暴走」といった70年代半ば〜80年代半ばにかけての名曲群がずらり並んでいる。

さらには2010年の『ザ・プロミス』で初お目見えした「ビコーズ・ザ・ナイト」のスタジオ・ヴァージョン、1975年のロキシーでの「涙のサンダーロード」のライヴ・ヴァージョン、1979年の『No Nukes』コンサートで初披露された際の「ザ・リヴァー」のライヴ・ヴァージョン、2014年にワシントンDCのナショナル・モールで演奏された「ザ・プロミスト・ランド」のアコースティック・ライヴ・ヴァージョンなども。大盤振る舞いだ。

そして、最大の聞き物が未発表曲の「アイル・スタンド・バイ・ユー」。もともとは2001年公開の映画『ハリー・ポッターと賢者の石』のためにスプリングスティーンが書き下ろした「アイル・スタンド・バイ・ユー・オールウェイズ」という曲で。せっかくの1曲ではあったのだけれども、ハリー・ポッターの作者さんはスター・アーティストの曲を使えばいいんでしょ的な業界的アプローチを嫌う方のようで、以降、ずっとお蔵入りしていたらしい。まあ、熱心なファンの間ではすでに超有名な1曲ではあったのだけれど、その初オフィシャル・リリースだ。これはめでたい。

サントラにはキャストによるセリフなども随所に挟み込まれているのだけれど。これが短いながらも面白い。音からの判断なので、何か実際のシーンでは違うのかもしれないけれど、たぶん友達のカセット・テレコを壊しちゃったらしき主人公が“ごめん、壊しちゃったかな。これ、誰?”と聞くと、友達が“ボスさ”と答える。“ボスって、誰の?”“俺たちみんなのボスさ”ってとことか。“生きていることが素晴らしいと感じることは罪ではないと/心の奥深くで考えている者たちのために/俺は俺の心を見抜けていない顔をひとつ見つけたい/場所をひとつ見つけたい/そして俺はツバを吐きかけたい/そんなバッドランドの顔に…”という「バッドランド」の歌詞を友達とシャウトしながら、たぶん彼らを苦しめるレイシストたちに立ち向かう気持ちを新たにしているらしきところとか。かっこいい。

繰り返しになるけれど、われわれも日本人なりにスプリングスティーンの曲に新たな切り口を見つける、ある種のとっかかりにできそうな1枚ではある。

ちなみに、サントラにはその他、a-haとかペット・ショップ・ボーイズも入っている。1987年という時代性を強調するためだろう。ああ、そういえばこのころ、こういう曲のほうがシーンの中心で、スプリングスティーンとかはむしろ異質だったかもなぁ…と、ちょっと懐かしい気分になったりもした。他にも、中東ディスコみたいな曲とか、ニュー・ウェイヴっぽい曲とかもあり。『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を受賞したインド出身の作曲家、A.R.ラフマーンの新曲も聞ける。

ところで、作品の舞台となっている1987年といえば、スプリングスティーンは『トンネル・オヴ・ラヴ』をリリースした年だったのだけれど。さすがに40歳を迎えて大人な苦悩に直面する姿を描いた内容が映画にそぐわなかったのか、あのアルバムからは1曲も使われていない。まあ、それはそれで仕方ないっすね。

もっと大人になったボスの充実した最新アルバムのほうはこちらで↓

WesternStars
Western Stars / Bruce Springsteen (Columbia)

ウエスタン・スターズ/ブルース・スプリングスティーン ボブ・ディランのローリング・サンダー・レヴューまつりがまだまだ収まらない中、こっちも出ちゃいました。ブルース・スプリングスティーン、話題の新作。こ ...

-Disc Review
-, ,

Copyright© Kenta's...Nothing But Pop! , 2019 All Rights Reserved.