Disc Review

Discover Who I Am: Blossom Dearie In London (The Fontana Years: 1966-1970) / Blossom Dearie (Mercury/UMC)

ディスカヴァー・フー・アイ・アム:ブロッサム・ディアリー・イン・ロンドン(ザ・フォンタナ・イヤーズ1966〜1970)/ブロッサム・ディアリー

以前、ヘレン・カーのベツレヘム・セッション集を紹介したときにも書いたことだけれど。1970年代前半、高校生だったころまで、ぼくは女性ジャズ・シンガーというと、正直、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレーくらいしかまともに認識していなくて。

あとは、まあ、ドリス・デイとか、ペギー・リーとか、ジュリー・ロンドンとか、ダイナ・ワシントンとか、ローズマリー・クルーニーとか、そういうポップ・ヒットも多く持つおねーさま方とか、ものすごくがんばってビリー・ホリデイとか、ニーナ・シモンとか…。

でも、その後、大学生になって、あれこれジャズ雑誌とかも読むようになって、ジャズ喫茶とかにも通うようになって、バイトもするようになって、レコードをそれまで以上に買えるようになって…。少しずつ少しずつ、あまり多くは語られることはないけれど、本当に素敵なシンガーが世の中にはたくさんいることを知るようになって。前述ヘレン・カーとか、アン・バートンとか、ビヴァリー・ケニーとか、ベティ・ブレイクとか…。

そして、何と言ってもこの人、ブロッサム・ディアリー。おなじみ、1957年のヴァーヴ盤を聞いたのが最初だったか…。A面ノッケの「ディード・アイ・ドゥ」一発でハマった。フランス語で歌われた「春の如く(It Might as Well Be Spring)」と「トゥ・ドゥスマン」にもやられた。特に素敵なコーラスを伴った「トゥ・ドゥスマン」。大好きになった。スウィンギーなピアノと超キュートな、でもそこはかとなくブルージーなヴォーカル。こういう人、いるんだ…と、ものすごく盛り上がったことを覚えている。

で、この人のいろいろなアルバムを集めるようになって。時期によっていろいろなテイストに挑んでいることを知ったのだけれど。選曲的に面白いのは1960年代後半、ロンドンにいったん活動の場を移していたフォンタナ・レコード在籍期。いわゆるジャズ系だけでなく、幅広いジャンルの曲に、それまで以上の自然体で、のびのびと挑んでいる様子が楽しい時期だった。当時イギリスでレギュラー番組を持ったりしてけっこう人気を博していたらしい。

そんなフォンタナ在籍期の音源を集大成した6枚組です。ディスク1から4が、当時のオリジナル・アルバム4作(1966年に出たクラブ“ロニー・スコッツ”でのライヴ盤『ブロッサム・タイム・アット・ロニー・スコッツ』、1967年に出たその続編ライヴ『スウィート・ブロッサム・ディアリー』、1967年の『スーン・イッツ・ゴナ・レイン』、そして1970年の『ザッツ・ジャスト・ザ・ウェイ・アイ・ウォント・トゥ・ビー』)の最新リマスター盤。1枚に1作ずつ収められている。それぞれにアルバム未収録のシングル音源も1〜2曲ずつ追加されているのだけれど。ストリーミングだとそれらシングル音源が全部の最後にディスク7としてリストアップされているみたい。これはこれでありかも。

で、ディスク5と6がすごい。ブロッサムさんの死後、ニューヨークのイースト・ダーラムの実家で発見された当時の未発表セッション・デモ27曲! アルバムやシングルで出た曲の別テイクもあるけれど、ここでしか聞けない曲もある。貴重すぎて泣けてくる。

ディスク6枚を通して、自身のオリジナル曲あり、ジャズ系スタンダードあり、「オン・ブロードウェイ」とか「サニー」とかポップR&Bヒットあり、ビートルズやサイモン&ガーファンクルあり、ジョニ・ミッチェルやバフィ・セント・メリーらのシンガー・ソングライターものあり、バート・バカラックものあり、ジミー・ウェッブものあり、ボブ・ドローものあり、ミシェル・ルグランものあり、ミュージカルものあり、ボサノヴァあり、シャンソンあり…。でもってブロッサムさん、そのすべてをひょうひょうと、キュートに歌い綴り、ピアノ演奏していて。最高。

この週末、また天気がよくないとか言われていて、いやになるけど。ブロッサムさんの1960年代の歌声で爽やかに過ごすぞっ、おーっ。

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