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Disc Review

The Boy Named If / Elvis Costello & The Imposters (Capitol/EMI)

ザ・ボーイ・ネイムド・イフ/エルヴィス・コステロ&ジ・インポスターズ

2020年、ヘルシンキ、パリ、ニューヨークを渡り歩きながら、様々な編成で持ち前の多彩な音楽性を思う存分発揮してみせた『ヘイ・クロックフェイス』に続く新作。ジ・インポスターズをバックに従えたアルバムとしては2018年10月リリースの『ルック・ナウ』以来、3年ちょいぶりの1枚ということになる。イフという名の少年。ジョニー・キャッシュを思い出すなぁ。

思えば、いろいろあってコステロの前バック・バンド、ジ・アトラクションズのラインアップからベースのブルース・トーマスが外れたのが1994年。残るスティーヴ・ニーヴとピート・トーマスにデイヴィー・ファラガーが加わる形でコステロのライヴをバックアップをするようになったのが2001年。で、その3人がインポスターズと名乗ってアルバムのバックアップをしたのは翌2002年の『ホエン・アイ・ワズ・クルーエル』が初。

てことは、今作がインポスターズとしては20周年記念盤ってことになるわけで。これはめでたい節目。それゆえか、メンバーみんな盛り上がっている。ニーヴはVOXのコンボ・オルガンをぴゃーぴゃー奮発しているし、ファラガーもベースでぐいぐい押しまくっているし、トーマスも超シンプルなセットで鉄壁のドラム・グルーヴを提供しているし。何よりコステロがジャズマスターをがしがしかき鳴らしながら炸裂しているのがうれしい。

新型コロナウイルス禍、リモート環境でのレコーディングだったようだけれど、そんな悪条件をものともせぬバンド感、一体感。たまらない。本作を聞いて、初期アトラクションズに出くわしたころの衝撃を想起するファンも少なくないと思う。

ただ、全曲同じバンド編成による演奏とはいえ、コステロの変幻自在ぶりは相変わらず。リトル・リチャード的な猥雑なR&B感、エディ・コクラン的なワイルドなロカビリー・グルーヴ、ロイ・オービソン的なメロウ・フィール、ハンク・ウィリアムス的な無骨なスウィートネス、ジョン・レノン的な屈折、そしてクルト・ワイル的な耽美感など。コステロは自在に、柔軟に行き来しながら、なんとも奥深くイマジネイティヴな音世界を構築してみせる。すごいソングライターだな、すごいパフォーマーだな、と。改めて思うのだ。

前作に引き続き、コステロとセバスチャン・クリスとの共同プロデュース。『ジス・イヤーズ・モデル』前後のシャープな音楽性と、『パンチ・ザ・クロック』前後の屈折したウィット感覚とが交錯するような。デビュー45年目のオリジナル・アルバム32作目にしてなお変わらぬこの味。個人的に今のところいちばんのお気に入り曲「ミストゥック・ミー・フォー・ア・フレンド」とか、あるいはオープニング曲の「フェアウェルOK」とか、荒々しい3拍子もの「ホワット・イフ・アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング・バット・ラヴ?」とか、『マイ・エイム・イズ・トゥルー』か『ジス・イヤーズ・モデル』に入っていてもおかしくない、ごきげんなロックンロールで。生で見たいなぁ。インポスターズにチャーリー・セクストンが加わった編成で米国でツアーしていたけれど。今年の6月からは英国でもツアーがあるらしい。いろいろな状況が好転して、海外アーティストの来日とか、またフツーにできる日が一日も早くやってきてほしいものです。

ちなみに、「マイ・モスト・ビューティフル・ミステイク」にはコステロお気に入りのニコール・アトキンスがデュエット・パートナーとしてゲスト参加している。ニコールさん、一昨年の名盤『イタリアン・アイス』(Amazon / Tower)の収録曲中心にピアノ+ヴァイオリン+チェロという編成で再演した一発録り新作『メンフィス・アイス』がまたまたすごくよくて近々紹介しようかなと思ってところでした。でも、フィジカル、まだバンドキャンプでしか見かけないんだよなぁ…。

ニコールさんはともあれ、コステロさんのほうはもちろんヴァイナル(Amazon / Tower)も含め各種フィジカル、出てます。国内盤CD(Amazon / Tower)には1曲、チャーリー・セクストンが客演した「トゥルース・ドラッグ」(ニック・ロウのシングルB面曲)のカヴァーもボーナス追加。

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