フロム・リバティ・ストリート/マパチェ
前にTwitterでもつぶやいたんだけど、国が悪いのか都が悪いのか例の組織が悪いのかはともあれ、もっとさっさとオリンピックを延期するなり中止するなり判断しておけば、もうちょいましなウイルス対策ができたんじゃないかって気がする。オリンピック、大丈夫ですよー、できますよー…的なイメージをキープするためにずいぶんと出遅れたような気がしてならないなぁ。われわれシモジモの健康とか命とかとオリンピックを天秤にかけた、みたいな。そうじゃなきゃいいんだけど。疑心暗鬼。不安は増すばかり。
不要不急の外出はするな、と。まあ、なんたって未知のウイルスとの闘いだから、もちろんそれはその通り。絶対にそうしたほうがいい。従います。基本的に日常のお買い物とか、ぼくの場合は複数スタッフが集まるスタジオに行かなきゃ成立しない仕事とか以外は、おとなしくおうちにいるようにしないと。
日課のウォーキングとかはどうなんだろう。諸説ありすぎて、どれを信じていいのかわからない。混んでないところを選んで行けばいいのか。マスクして。あ、いや、でもマスクなんかどこにも売ってないなぁ…。
あとは、おうちでいかに思い切り陽気に楽しむか、みたいな。まあ、そこに関しては、むしろ昔から“もっと外行って遊びなさい”的なことばっかり言われながら育ったタイプの人間としては得意なところではあって(笑)。今おうちで聞きたい音楽、読みたい本、見たい映画、整理しておきたい資料、セッティングしたい機材、作ってみたい料理…など、いくらでもあるし。この非常時を積極的にとらえて、ポジティヴに、元気に、楽しく、おうちで過ごしましょう。
ということで、今朝紹介するのは、なにやらほぼ全てのレコーディングをロサンゼルスにあるおうちと近所ですませたらしき1枚。カリフォルニアのフォーク/カントリー・デュオ、マパチェの新作アルバムです。2017年に出たセルフ・タイトルド・アルバムに続く第2弾。ハイスクール時代に出会ったというサム・ブラスッチとクレイ・フィンチが、長年、時をともにした者どうしならではのハーモニーとともに届けてくれた佳盤だ。
クリス・ロビンソン・ブラザーフッドのメンバーでもあるニール・カザルやアダム・マクドゥーガルとともにサークルズ・アラウンド・ザ・サンという強力なバンドをやっていることでもおなじみのベーシスト、ダン・ホーンがプロデュース。アコースティック・ギター、パーカッション、ベース、薄めのシンセ…みたいな、簡素かつリラックした音像がとても気持ちいい。
アルバム・タイトルにある“リバティ・ストリート”というのが彼らが住むロサンゼルスの地域。住んでいるおうちの地下がスタジオで。その建物の住人は彼らも含めてほとんどがミュージシャンらしく。生活している部屋と地下を行き来しながら、ご近所さんたちとともに、思いついたアイデアをどんどん形にしていくことができたのだとか。アルバム全体に漂う、1970年代西海岸っぽいムードはそんな環境から醸し出されるものなのだろう。
と、近所で録音されたものとはいえ、曲自体はデュオであちこちツアーして回る中、各地のホテルの部屋とかで書かれたものが大半だとか。その辺も、シンプルな音像のわりに聞き手を飽きさせない秘密なのかも。往年のシンガー・ソングライター調あり、トラディショナルなフォークあり、先日紹介したクリス・ロビンソンのグリーン・リーフ・ラスラーズにも通じるコズミック・カントリーっぽい曲あり、ベイカーズフィールド・トワング調あり、ロンサム・カウボーイものって感じのカントリー・バラードあり、メキシコのボレロっぽい哀愁曲あり、ハワイっぽいサーフ・チューンあり…。
個人的には特にメキシコ風味の曲に惹かれた。フィンチさんのほうがハイスクール卒業後、2年ほどメキシコに住んでいたことがあるらしく、けっこう本格的。実際、彼らが住むロサンゼルスの地域は英語だけでなくスパニッシュも飛び交っているようで。そういう環境下で生まれたものらしい。トリオ・ロス・パンチョスでおなじみの「町へ行こう(Me Voy Pa’l Pueblo)」のカヴァーもやってます。パンチョス大好きなぼくとしてはそれだけでコーフンものです。