Disc Review

All Roads Lead Home / Molina, Talbot, Lofgren & Young (NYA/Reprise Records)

オール・ローズ・リード・ホーム/モリーナ、タルボット、ロフグレン&ヤング

ラルフ・モリーナ、ビリー・タルボット、ニルフ・ロフグレン、そしてニール・ヤングによるニュー・アルバム。とはいえ、これ、クレイジー・ホースのアルバムとは銘打っていない。あくまでも“モリーナ、タルボット、ロフグレン&ヤング”、MTLYのアルバムである、と。なるほど。

新型コロナのパンデミック期間中、クレイジー・ホースとして顔を突き合わせての活動ができなくなったモリーナ、タルボット、ロフグレンの3人はそれぞれの環境、つまりアルバム・タイトルに沿って表現するならば“それぞれのホーム”に立ち返り、それぞれの楽曲を3曲ずつ、それぞれの人脈とともにレコーディング。ご存じの通り、全員ソロ・アルバムも出した経験がある連中だから。そんな3人が各々3曲入りのEPを作って持ち寄った感じか。タルボットは自らのビリー・タルボット・バンドを率いて、ロフグレンは基本的にすべての楽器をひとりでこなしつつ、モリーナも仲間を集めてバンド編成で録音。そこにニール・ヤングがソロの弾き語り音源を1曲加えて、計10曲のアルバムを編み上げた。

オムニバスかよ、と言われるかもしれないけれど、考えてみればビートルズの“ホワイト・アルバム”にしても、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの『デジャ・ヴ」にしても、はっぴいえんどの『風街ろまん』にせよ、メンバーそれぞれのセッションごとに別セッティングで録音された楽曲群を持ち寄った感じの名盤だったし。パンデミックという未踏の障壁をプラスに転じながら、クレイジー・ホースなりの“ホワイト・アルバム”を作り上げたということか。

収録曲は基本的にタルボット→ロフグレン→モリーナの順に並んでいて。最初の1巡のあと、4曲目にヤングさんがクレイジー・ホースとの2021年作『バーン』の冒頭で披露していた「ソング・オヴ・ザ・シーズンズ」をアコースティック・ギターの弾き語りで綴ったソロ・ヴァージョンが挟まっている。つまり、タルボット→ロフグレン→モリーナ→ヤング→タルボット→ロフグレン→モリーナ→ タルボット→ロフグレン→モリーナ。

欲を言えばヤングさんが、理想的にはもう2曲、少なくとももう1曲、持ち寄ってくれれば並びがもっときれいだったのにね(笑)。まあ、あくまで自分もクレイジー・ホースの一員であるということを静かに主張するため、いちおうサービス的にラインアップに名を連ねたということなのかもしれないけれど。でも、既出曲とはいえ、「ソング・オヴ・ザ・シーズンズ」の存在感は本作においても圧倒的。いちばん長いし。いちばんいい曲だし。これ以上ヤング作品が増えちゃうとそればっかり目立ってしまうかも。仕方ない。困ったものです。

じゃ、他が思いきり劣るのかと言えば、そんなことはまったくなくて。モリーナ、タルボット、ロフグレン、3人それぞれの個性がとてもよく表現されており、これを聞いてから改めてニール・ヤング&クレイジー・ホースのアルバムへと立ち返るとまた違った感触で接することができそう。ブルース・スプリングスティーンのところでも鍛えられてきたロフグレンのキャッチーなアプローチはもちろんごきげんだし、タルボットの渋い奥行きを感じさせる世界観も沁みるし、モリーナのちょっと濡れた歌心も泣ける。

泣けるといえば、アルバム全体がクレイジー・ホースのオリジナル・メンバーだったダニー・ウィッテンと、盟友デヴィッド・ブリッグス、そして長年のマネージャーだったエリオット・ロバーツという3人の故人に捧げられていて。クレイジー・ホースという強く深い絆の長い長い歴史を改めてしみじみ噛みしめます。

で、最後にちょこっと業務連絡なのですが。明日は早朝からスケジュールが入っちゃっているもんで、ブログ更新の時間が取れなさそう。ということで臨時休業させていただきますね。また木曜日に!

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