Disc Review

Rod Stewart 1975-1978 / Rod Stewart (Rhino)

ロッド・スチュワート1975-1978/ロッド・スチュワート

近年のロッド・スチュワートに対する評価の微妙さに関しては、以前、英ロイヤル・フィルとの共演盤を紹介した際、あれこれ書かせてもらったけれど。

それ以前の彼に関しても、どの時代のパフォーマンスが好きかについてはあれこれ意見が分かれそうだ。1968年にジェフ・ベック・グループのリード・シンガーとして本格的にレコード・デビューを飾ったころの歌声とか、1970年代にフェイセズのメンバーとして大活躍したころの歌声とか、それと並行してソロ・アーティストとして活動していた時期の歌声とか…。

ぼくは個人的には、やはりこの時期が好き。初めてリアルタイムで買ったロッドのソロ・アルバムが1971年の『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』だったこともあって。そこから後追いで買った1969年の『ロッド・スチュワート・アルバム(An Old Raincoat Won't Ever Let You Down)』とか1970年の『ガソリン・アレイ』とか、あの辺を死ぬほど聞いていた。浅川マキのカヴァーも含めて思い出深い。

この時期のロッドが聞かせてくれていたフォーク、カントリー、ブルース、R&B、ブルースなどの荒っぽい混合サウンドは本当に独自のものだった。通常のフォーク・ロック/カントリー・ロックのようにフォークなりカントリーなりをロック的なサウンドに取り入れながら再構築するのではなく、ロッドはフォークそのもの、カントリーそのものを、アコースティックなサウンドのままロックさせてしまった。これもまた彼のシンガーとしての類い稀な力量があってこその離れ業だったと思う。

が、泣く子も黙る最強ロック・エンタテイナーとしてのロッドの本領はそれ以降、1975年にワーナー・ブラザーズ・レコードと契約し、全世界に向けて本格進出を開始してから発揮されることになる。1975年以降の彼は、ソウル味を適度にまぶしたアダルト・コンテンポラリー・シンガーというイメージでスターダムに登り詰めた。

1975年の『アトランティック・クロッシング』、1976年の『ナイト・オン・ザ・タウン』 、1977年の『明日へのキック・オフ(Foot loose & Fancy Free)』、そして1978年の『スーパースターはブロンドがお好き(Blondes Have More Fun)』と全米/全英ナンバーワン・ヒット・アルバムを連発。「セイリング」「今夜きめよう(Tonight's the Night)」「もう話したくない(I Don't Want to Talk About It)」「アイム・セクシー(Do Ya Think I'm Sexy?)」など、多くのヒット・シングルも放った。

まさにノリノリ期。と、そんな、もっとも乗りに乗っている時期のロッドの歌声を一気にまとめたのが、今朝紹介するアナログLP5枚組『ロッド・スチュワート1975-1978』だ。前述『アトランティック・クロッシング』『ナイト・オン・ザ・タウン』『明日へのキック・オフ』『スーパースターはブロンドがお好き』という特大ヒット・アルバム4作をそれぞれオリジナルのジャケットに入れた形で箱に収めて。さらに1枚、各セッションからのアウトテイク10曲を収めた『アンコール1975 -1978』なるレア音源集がボーナスLPとして付く。

このボーナスがやっぱりうれしい。まあ、LPのA面5曲は既発ものだ。ブッカー・T&ジ・MGズをバックに従えてカヴァーした3曲、リー・ドーシーの「ホーリー・カウ」、ビージーズの「トゥ・ラヴ・サムバディ」、エルヴィス・プレスリーの「心の届かぬラブレター(Return to Sender)」は、2009年に米ライノが編纂した『アトランティック・クロッシング』の2CDデラックス・エディションに収められていたもの。そのあとの2曲、オリジナル・アルバム未収録だったシングルB面曲「ロージー」の初期ヴァージョンと映画『ザ・ビートルズと第二次世界大戦』で使われた「ゲット・バック」のカヴァーは、同じく2009年にライノから出た『ナイト・オン・ザ・タウン』の2CDデラックス・エディションに収録ずみ。

このCD2枚組デラックス・エディション・シリーズがその後も続いてくれればよかったのだけれど、セールス的に今いちだったのか、権利関係がややこしかったのか、その夢はかなわず。しかし、今回このボーナスLPのB面で、スモーキー・ロビンソン作「ユー・リアリー・ガット・ア・ホールド・オン・ミー」(近年の『ソウルブック』ヴァージョンよりもラフでルーズでワイルド。キーも高い。途中で間違っちゃったりするところも楽しい)のごきげんなカヴァーをはじめ計5曲のレア音源がめでたくお披露目された。すべて『明日へのキック・オフ』と『スーパースターはブロンドがお好き』のセッションからのアウトテイクだ。

今回復刻されたオリジナル・アルバム4作のアナログ盤は当然長らく廃盤になっているようなので、入手するなら絶好のチャンス。音のほうはきっちり最新リマスターがほどこされている。まあ、ストリーミングもされているので、すでにオリジナルLPは持っていて、最新リマスターに興味がないという方はとりあえずストリーミングで曲だけ楽しむのも悪くないかも。さらに、CDでいいよって言うならば、1975年以降2001年までのオリジナル・スタジオ・アルバム14作を詰め込んだ豪勢な箱(Amazon / Tower)が今回のヴァイナルLP5枚組箱より安い価格ですでに出ているので、レア音源を抜きにすればもちろんそちらで問題なし。なので今回の箱、やっぱりロッドはヴァイナルで…という方にのみおすすめです。

でも、やっぱりロッドはヴァイナルでね!(笑)

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