Disc Review

makeover / k.d.lang (Nonesuch)

メイクオーヴァー/k.d.ラング

ダンス・リミックスとか、あんまり聞くの得意じゃない…というか、むしろまったく聞かないんだけど(笑)。

どんなものでも、リミックスってコンセプト自体、あまりぐっとこない。好きじゃない。答えはひとつにしてほしいのだ。いろいろなリミックスが存在するのは、たぶんその楽曲に対するアーティスト・サイドの“迷い”に過ぎないんじゃないかとか、ぼくは勝手に思っている。

なので、考えが古いと言われようがなんだろうが、やっぱりオリジナル・ヴァージョンこそが正義。基本的にぼくは、あくまでオリジナル・ミックスというものにこだわりながら日ごろ音楽に接している。

近年よくある、ビートルズのジャイルズ・マーティン・リミックスとか、ジョン・レノンのポール・ヒックス・リミックスとか、ザ・バンドのボブ・クリアマウンテン・リミックスとか、そういう“オリジナルの味を尊重した”と言われる最新リミックスにも、正直、たいして興味が持てない。お寺とか仏像とかのお身拭いみたいなもので、最新技術で積年の“ほこり”を取り払うみたいな作業もけっして悪いこととは思わないけれど。でも、それならリマスターだけでいいじゃん。さらに言えば、ああいうリミックス版をフィーチャーしたボックスセットにはなぜかオリジナル・ミックスが入っていなかったりすることも多くて。そういうときには、ちょっとイラッときちゃったりも…。

とはいえ、たまにはいいもんだな、と。そんなことを思わせてくれた1枚。それが今朝紹介するk.d.ラングの『メイクオーヴァー』です。ジャケット、最高。1992年から2000年までに彼女が発表した多彩なダンス・リミックス14トラックをピックアップした企画コンピレーションだ。この人、こういうのもちょいちょい出していたんだね。この6月、LGBTQ+の権利について啓発を促す、いわゆる“プライド月間”に合わせてリリースされた。

もちろんぼくの場合、基本あまり聞くのが得意じゃないリミックスものなので、ちょっと腰を引き気味に、ではありましたが。でも、LGBTQ+に関してまったく何ひとつ理解できていなさそうな日本の政界の在り方にもアッタマきてたし。応援の気持ちもこめてちょっと聞いてみた。そしたら、これが案外すんなり楽しめて。今さら何言ってんだと呆れられそうだけど、リミックスの面白さをほんの少しだけ体感できたかも、みたいな。まじ、今さらですが…(笑)。

1992年の出世作『アンジャニュウ』から1曲。1993年のサントラ『カウガール・ブルース(Even Cowgirls Get the Blues)』から2曲4トラック。1995年の『ワールド・オヴ・ラヴ(All You Can Eat)』からも2曲4トラック。1997年の『ドラッグ』から1曲。で、2000年の『インヴィンシブル・サマー』からも2曲4トラック。かつてダンス・チャートで1位を獲得したことがある「リフテッド・バイ・ラヴ」と「イフ・アイ・ワー・ユー」も含む計8曲14トラックだ。

リミックスを手がけたのは、ベン・グロス、ジュニア・ヴァスケス、トニー・ガルシア、グレッグ・ペニー、ラヴ・トゥ・インフィニティなど、ぼくですら名前を知ってるエンジニア/プロデューサーも含む顔ぶれ。それぞれグルーヴに着目したり、コード感に着目したり、オブリのフレーズに着目したり、思い思いのやり方でk.d.独特の世界観に別のパースペクティヴを付加してみせている。

そうそう、こういうふうに過剰になっていくところがやっぱり苦手なんだよなと、リミックスへの違和感を再確認した曲もあった。反対に、もしかしたらオリジナルよりもこっちのほうがいいんじゃない? と思えた曲もあった。まあ、もしかするとリミックス云々という手法を超えて輝くk.d.姐さんならではの歌声の素晴らしさがすべてをなぎ倒してしまっているだけなのかもしれないけれど…。

いや、そうではなく。これはこれで面白い形のベスト・アルバムなんだ、とポジティヴにとらえたほうが楽しい。そのほうが盛り上がる。でもって、えーと、元はどんなだっけ? とばかり、オリジナル・ヴァージョンへと立ち返りつつ、k.d.姐さんの豊かな表現力に改めて打ちのめされる、みたいな。

そんな感じでどうでしょう。最後はやっぱりオリジナル・ヴァージョンへ、ね。

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