Disc Review

Hardware / Billy F Gibbons (Concord Records)

ハードウェア/ビリー・F・ギボンズ

1986年だったか87年だったか、ZZトップが来日してくれたときインタビューしたことがあるのだけれど。フロントマンのビリー・ギボンズに、「最近の音楽ではどんなものが好きですか?」と質問してみたら、「一年中ツアーしてるから最近の音楽なんか聞いてるヒマはねーよっ!」と、不敵な笑みを浮かべながらきっぱり答えてくれたっけ(笑)。忘れられない。かっこよかった。

時代とともに変わり続けることもロックなら、ひとつところに頑固なまでにとどまって、けっして変わらずにいることもまたロック。そう力強く思い知らせてくれたものだ。

と、そんなZZトップ。バンド活動のほうは、まあ、結成50周年を祝うコンピを出したり、ツアーをやったり、新作に向けて準備中だというニュースが聞こえてきたり、それなりにやってる感はあるものの、オリジナル・アルバムのリリースということになると2012年の『ラ・フューチュラ』以来しばし休止中だ。

が、その代わりとばかり、ビリー・ギボンズのソロ活動が活発化。新作ソロ・アルバム、またまた作ってくれました。2015年の『ペルフェクタムンド』、2018年の『ビッグ・バッド・ブルース』に続くソロ3作め。最近はいろいろ他のアーティストのアルバムへのゲスト参加も相次いでいるし。御年71歳にしてまだまだ超お元気。うれしい限りです。

今回は、ギボンズ(ギター)、マット・ソーラム(ドラム)、マイク・フィオレンティーノ(ベース、ギター)という編成が基本。プロデュースもこの3トップに、エンジニアのチャド・シュロッサーが加わった顔ぶれだ。ソーラム同様、前作から引き続きのオースティン・ハンクス(ギター)も参加。さらには本ブログでもこことかこことかで取り上げてきた姉妹ロック・ユニット、ラーキン・ポーも1曲、「スタッキン・ボーンズ」って曲にフィーチャリング・ゲストとして迎えられて、おじいちゃんと孫娘の共演みたいな楽しいバトルを繰り広げている。

過去のソロ作ではギボンズの自作曲が半分くらいの感じだったけれど、今回は全12曲中11曲が自作。「ヘイ・ベイビー、ケ・パソ」のみがテキサス・トーネイドズの演奏でおなじみ、オーギー・メイヤーズ作品のカヴァーだ。

で、まあ、ものすごく細かく聞き込んでいくと、1曲ごとに、当然のごとくスワンプっぽいテイストが盛り込まれていたり、ブルース・ロック的解釈を真っ向から炸裂させていたり、ハード・ロック〜メタルっぽいテイストがまぶされていたり、渋いシンガー・ソングライター味が発揮された泣きのソウル・バラードがあったり、エキゾチックなサーフ・ミュージック的なリフが大暴れしていたり、スポークン・ワードの要素を取り込んだコズミック・カントリーものがあったり…。

とはいえ、でっかく見れば、結局のところ何ひとつ新しいことはやっていない感触というか。ZZトップの諸作と比べても、こちらの耳と心と下半身に届いてくるごきげんな快感はほぼ同じというか。でも、それでOK。それでこそOK。ビリー・ギボンズのようにギターを“歌わせる”ことができる男に、それ以外の何をしてもらいたいというんだ…ってこと。

米カリフォルニア州パーム・スプリング近郊のハイ・デザートにあるエスケイプ・スタジオでの録音。砂漠のど真ん中に半ば腕づくで幽閉されるような形でのレコーディング作業だったようなのだけれど。そんなある種ストレスフルな境遇すらぶっとばすテキサス・ブギー・ロックの大爆発。

汗だくで、喉渇かして、ビールにありついて。で、そのビールを一気に飲み干す、まさにその瞬間をより楽しくグルーヴさせるための最終兵器としてのロックンロール。いいよね。これだよね。

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