
マイ・エイム・イズ・トゥルー:49周年記念エディション/エルヴィス・コステロ
49周年…って。エルヴィス・コステロらしいというか。絶妙の外し具合。やっぱり一筋縄にはいかない人だなぁ。
1977年にリリースされたエルヴィス・コステロのファースト・アルバム『マイ・エイム・イズ・トゥルー』を5CD、全104曲に拡張したボックスセット。発売から49年目の今年、2026年に出ちゃいました。もちろん、もともとは50周年を祝おうという企画として立ち上げられたプロジェクトだったらしいのだけど。
その話を持ちかけられたコステロが、いや、そんな大仰なこと、勘弁してくれよ、と断ったことで、今年のリリースになっちゃったんだとか。あと数カ月、きりのいい来年まで待つとか、俺はそういうことをしないよ、当たり前だろ…的な?
当時まだ22歳。昼間はコンピューター・オペレーターとして働きながら、自宅で曲を書き、デモ・テープを録音し、音楽出版社やレコード会社に持ち込んでは断られ続ける…みたいな生活を続けていたデクラン・マクマナスくんが、いかにして新興レーベル“スティッフ”の目にとまり(仮病で仕事を休んでスティッフ・レコードにデモ・テープを持って行ったらしいけど)、ニック・ロウとの出会いなどを経て、やがて黒縁メガネのロックンローラー“エルヴィス・コステロ”というペルソナを確立していったか、その顛末をCD5枚でたどるボックスセットという感じだ。
ディスク1はもちろん『マイ・エイム・イズ・トゥルー』本編の2026年最新リマスター。UKオリジナル盤には入っていなかった「ウォッチング・ザ・ディテクティヴ」を最後に追加した、UK盤+US盤の折衷スタイルだ。
ニック・ロウのプロデュースの下、米西海岸マリン・カウンティのバンド、クローヴァー(ヴォーカルはヒューイ・ルイスだったが、もちろんここには不参加)がバックを務め、ちっぽけなパスウェイ・スタジオでのほんの4回のレコーディング・セッションで、ほぼ一発録りで仕上げられた1枚。これ、初めて聞いたとき、その剥き出し具合というか、骨格しかないみたいな音像と、コステロの独特のしゃがれ声と、シックスティーズ音楽に通じるポップでキュートなメロディ感覚と、やさぐれ気味の歌詞がとてつもなく新鮮だったっけ。懐かしい。
“ザ・ブルー・プリント”と副題が付けられたディスク2は、その名の通り、ブルー・プリント=設計図。1975〜76年のベッドルーム録音、ホープ&アンカー・スタジオでの1976年セッション、パスウェイ・スタジオでの初期録音など17曲が収録されている。うち13曲が未発表だ。グラム・パーソンズ的なカントリーをはじめ、ランディ・ニューマン的なシニカルさと郷愁とが交錯するジャジー・チューン、フォーク、R&Bなどの影響もたたえたシンガー・ソングライターふうの持ち味が目立っていたりして、とてつもなく興味深い。「レディオ・レディオ」の原型とか、「アクシデンツ・ウィル・ハプン」や「ウォッチ・ユア・ステップ」とか発展していくことになるイメージのカケラとかも見受けられる。
“ザ・ストレンジャー・イン・ザ・ハウス”という副題のディスク3は、『マイ・エイム・イズ・トゥルー』関連のデモやアウトテイクなど28曲。パブ・ロック・シーンの片隅で活動していたという以前のカントリー系バンド、フリップ・シティ時代にも遡っている。ここにもカントリー、フォーク、R&B、ソウルなどの要素が落ち着き無く見え隠れしているのが面白い。
ディスク4は“ビカミング・ジ・アトラクションズ”。いよいよアトラクションズが登場する。1977年から78年にかけて、英ロンドンの《ナッシュヴィル・ルーム》みたいないろいろなステージとかテレビ番組とかに出演しながら、スティーヴ・ナイーヴ、ブルース・トーマス、ピート・トーマスらと、時代の変わり目を象徴するかのような、なんともシャープで、荒々しく、急速なロックンロール・サウンドを作り上げようとしていたころの記録だ。全25曲中12曲が未発表。
で、ディスク5が“カヴァード・イン・クローヴァー”。2007年、サンフランシスコの《グレイト・アメリカン・ミュージック・ホール》で行われた、コステロとクローヴァーの再会ライヴの模様が収められている。UK盤『マイ・エイム・イズ・トゥルー』の全曲演奏+「ウォッチング・ザ・ディテクティヴ」、および「ラヴ・ハズ・ノー・プライド」や「ピース・ラヴ・アンド・アンダスタンディングズ」のカヴァーとか、クローヴァーの楽曲とか、いろいろ。
全104曲中52曲が未発表。コステロ自身が書き下ろした文章や、ニック・ロウ、ジョン・マクフィー、スティーヴ・ナイーヴ、ピート・トーマス、ロザンヌ・キャッシュ、ピーター・ウルフ、ジム・ジェイムスらのコメント、未公開写真、手書き歌詞、日記などを満載したブックレット付きです。

