Disc Review

The Vivian Line / Ron Sexsmith (Ronboy Rhymes/Cooking Vinyl)

ザ・ヴィヴィアン・ライン/ロン・セクスミス

ほんと、訃報が続きますね。もちろん誰にでも死は訪れるものだし、世代ごとに悲しい報せがある時期に集中してしまうのは仕方ないことなのだろうけれど。やっぱりとても寂しいです。

そんな中、ロン・セクスミスの新作のこと、思い出しました。その中にアコースティック・ギターのスリー・フィンガー・ピッキングに乗って淡々と綴られた「フラワー・ボックシズ」って曲が入っていて。そこでセクスミスさんが“君がいなくなっても/生きていかなくちゃ/君の魂は生き続ける/このフラワー・ボックスの中で”と歌っていた。

そういう気分だなぁ。でも、こうした別れの瞬間を迎えることでまた自分の青春の日々の記憶が鮮明に蘇ってくることもあるわけで。人生って深いですわ。

というわけで、年齢を重ね、さすがに死生観のようなものも曲の中に見受けられるようになってきたロン・セクスミスの新作。この機会に紹介しておきましょう。先月出ていたのにタイミングを逃してつい紹介しそびれていた盤です。

フル・アルバムとしては17作目? もうそんなになりますか。ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクやダニエル・ラノワがサポートしたメジャー・デビュー・アルバムが1995年のリリースだから、もう30年近く前。「シークレット・ハート」聞いて、一発でやばいと思ったのが懐かしい。

あれからずっと瑞々しさを失うことなく曲を書き、歌い続けているわけで。素晴らしい。今回はブラッド・ジョーンズを共同プロデューサーに迎え、米ナッシュヴィルで録音。アルバム・タイトルはカナダのオンタリオ州ストラトフォードにあるセクスミスのおうちのそばの県道の名前にちなんだものだとか。

そんなふうに、ある意味ものすごくオーソドックスというか。ストレートというか。時流とか何ひとつ考えていない、ありのままの自分の今の有り様とか葛藤とかを素直に提示した1枚という感じで。オープニングを飾る「プレイス・コールド・ラヴ」からまっすぐ聞く者の心に時を超えた歌心を届けてくれる。

「アウトデイテッド・アンド・アンティクエイテッド」って曲では、ずばり、“時代遅れで古臭い/ぼくは過去に生きている/だって未来は不確か/今日という日が続くわけがない”とか“みんなはスマホをいじっているけれど/代わりにぼくは詩を書く”とか“絶滅の危機かな/どんどん奇妙な存在になってくる/エクセントリックで古い/毎日ディスク・プレーヤーと一緒に散歩する/そんなふうに時が過ぎていく”とか。若い世代から見れば開き直りと映るのかもしれないけれど、いや、自分の世代に正直に、素直に生きることも大事だから。

「ホワット・アイ・ハッド・イン・マインド」の“悲観を説くことが妥当だとも知的だとも思えない”というフレーズにもこの人ならではの優しい頑固さのようなものが漂っていて。ぐっときます。

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