Disc Review

Best of Bruce Springsteen / Bruce Springsteen (Columbia)

ベスト・オブ・ブルース・スプリングスティーン/ブルース・スプリングスティーン

ボブ・ディランとか、イーグルスとか、最近はなんというか、こう、マニアックさを一切廃した超ストレートな代表曲集という感じのベスト盤が相次いでリリースされていて。そういうのがもうひとつ出ました。

ブルース・スプリングスティーン。

去年、日本独自の強力ベストが出たばかりですが。世界共通の最新ベスト盤、4月19日に発売されました。フィジカル・フォーマットとしては1CDと2LPの2パターン。1973年のデビュー作『アズベリー・パークからの挨拶(Greetings from Asbury Park, N.J.)』から2020年の『レター・トゥ・ユー』まで、全キャリアを満遍なくさらーっとなでた全18曲入りだ。

さすがに18曲ぽっちなので、1992年の『ラッキー・タウン』、2005年の『デヴィルズ・アンド・ダスト』、2006年の『ウィー・シャル・オーヴァーカム:ザ・シーガー・セッションズ』、2009年の『ワーキング・オン・ア・ドリーム』、2012年の『レッキング・ボール』、2014年の『ハイ・ホープス』の収録曲はスルー。

さらに言えば、1984年の『ボーン・イン・ザ・USA』から送り出された無数の全米トップ10ヒット群、「カヴァー・ミー」(全米7位)、「アイム・オン・ファイア」(6位)、「グローリー・デイズ」(5位)、「アイム・ゴーイン・ダウン」(9位)、「マイ・ホームタウン」(6位)とかも、まあ、確かに全部入れると『ボーン・イン・ザ・USA』そのまんまになっちゃうので仕方ないのだろうけど、全然入っていなくて。ちょっと残念だ。

そんな具合に、隠れた名曲とかレア音源とかをいかにマニアックな視点でコンパイルするか…的な方向性ではまったくない1枚。確かにボスもすでにデビューして半世紀以上。前出の特大ヒット作『ボーン・イン・ザ・USA』からも40年だ。興味はあるけれどあんまりちゃんと聞いたことはない、みたいな若い世代も多いことだろう。かといってキャリアが長すぎるのでどこから聞いていいやら悩ましく…。と、そういう方の入門編としてはこれくらいざっくりした盤のほうが絶好なのかも。

「ロザリータ」「明日なき暴走(Born to Run)」「涙のサンダー・ロード(Thunder Road)」「バッドランド」「ハングリー・ハート」「ボーン・イン・ザ・USA」「ダンシング・イン・ザ・ダーク」とか、そのあたりは当然全部入っているし。「ガールズ・イン・ゼア・サマー・クローズ」とか「ハロー・サンシャイン」とか近年の佳曲もちょこちょこ入ってるし。ディランのとき同様、改めてこの辺の真っ向からの代表曲を聞き直してみると、なるほど、やっぱいい曲だよなぁ、と実感するのも事実だし。

ただ今回、ぼくはフィジカルではなく、ハイレゾのデジタル・リリースをダウンロード購入しました。サブスクのストリーミングもそうなんだけど、フィジカルの全18曲に対して、デジタルのほうは全31曲。13曲多いだけに、こっちならば少しだけ納得ポイントも高くなるかなと思って。

フィジカルからは外された「凍てついた十番街(Tenth Avenue Freeze-Out)」、「暗闇へ突走れ(Prove It All Night)」、「ザ・リヴァー」、前述した「グローリー・デイズ」といった必須曲群に加えて、『トンネル・オヴ・ラヴ』からの「タファー・ザン・ザ・レスト」、アルバムごと見過ごされた『ラッキー・タウン』からの「イフ・アイ・シュッド・フォール・ビハインド」と「リヴィング・プルーフ」、これもアルバムごと外されていた『デヴィルズ・アンド・ダスト』からの「ロング・タイム・カミン」、『ワーキング・オン・ア・ドリーム』からの「ザ・レスラー」、『レッキング・ボール』からの「ウィ・テイク・ケア・オブ・アワ・オウン」、そして『レター・トゥ・ユー』からの「ゴースツ」が追加されて。

個人的にはもう一声、「マイ・シティ・オブ・ルーインズ」とか「ウェイティン・オン・ア・サニー・デイ」とか「クウィーン・オブ・ザ・スーパーマーケット」とかもほしかったところだけど。

いや、それより何より、『ハイ・ホープス』からはデジタル版のほうにもひとつも選ばれていないんだよなぁ。ボスが気に入っていないアルバムってわけじゃないと思うんだけど。実際、この4月7日にカリフォルニア州イングルウッドのザ・キア・フォーラムで行なわれたボス&Eストリート・バンドのコンサートでは、トム・モレロをゲストに迎えて『ハイ・ホープス』から「アメリカン・スキン(41ショッツ)」と「ザ・ゴースト・オヴ・トム・ジョード」を初披露したばかりだし。

でも、まあ、いいか。きりがないもんね。われわれファンとしては、マニアのお楽しみ、おなじみの“live.brucespringsteen.net”で最新ツアーの様子を追いかけ続けるだけで大変なんだから(笑)。

ちなみに、そのキア・フォーラムでのオフィシャル・ライヴは『April 7, 2024 - Kia Forum, Inglewood, CA』ってやつで聞けます。ぼくはいつものようにロスレス・ファイルのダウンロードでゲットしました。この日はパティ・スキャルファとのデュエットで「ファイア」を歌ったり、2014年以来となる「オープン・オール・ナイト」をぶちかましたり、「シェリー・ダーリン」をセットリストに復活させたり、なかなか聞きどころの多いショーでした。よろしければベスト盤と合わせて、ひとつ。

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