Disc Review

Pop Scrapbook / Dana Countryman (Sterling Swan Records and Tapes)

ポップ・スクラップブック/ダナ・カントリーマン

ダナ・カントリーマンの名前を知ったのはわりと最近で。2017年のこと。

きっかけは、大好きなリサ・ジェニオって女性シンガーをフィーチャーした「マイ・ハート・ビロングズ・トゥ・ワン・ボーイ」って曲。このリサさん、ワンダーミンツのダリアン・サハナジャと一緒に何度かプライベートで日本に遊びにきていて。そのとき紹介してもらったのだけれど。最高。独特のユーモア感覚がごきげんで。昔の素敵な音楽のこともよく知っていて。何よりもものすごくキュートでレトロで魅力的な歌声を持っていて。キャンディパンツとか、ロズウェル・シスターズとか、いろいろなグループでむちゃくちゃ趣味性の高い曲を歌っていて…。

そんな流れで出くわしたのが、彼女が歌う前述の「マイ・ハート・ビロングズ・トゥ・ワン・ボーイ」。で、この曲が入っていたのが、超マニアックな再発コンピを連発していることでおなじみ、豪ティーンズヴィル・レコードから出ていた『ダナ・カントリーマンズ・ガールズヴィル:ニュー・ソングズ・イン・ザ・スタイル・オヴ・イエスタデイズ・ヒッツ』(Amazon / Tower)ってアルバムだった。

1曲ごとに、リサとか、スワン・ダイヴのモリー・フェルダーとか、それぞれ違う個性の女性リード・シンガーを立てて、アルバム・タイトル通り、往年のガール・グループ・サウンド・スタイルの書き下ろし全19曲をレコーディングしたもの。それを仕切っていたのが、ダナ・カントリーマンだった。

このアルバムがあまりにも良すぎたもんで。興味を持って調べてみたら、カントリーマンさん、1954年、ワシントン州マウント・ヴァーノン生まれ。ぼくより年上だった。けっこう古くからパフォーマーとして、ソングライターとして、いろいろ変わったことをやってきた人みたいで。

目立った動きとしては、1980年代末にアメイジング・ピンク・シングズという、ちょっと風刺の効いたマンハッタン・トランスファーみたいな男性2人女性2人のヴォーカル・グループの一員としてカセットを出したり、ジャン・ジャック・ペリーと組んであの手この手のムーグ・インストみたいなCDを出したり、アメイジング・ピンク・シングのメンバーでもあった奥さま、トリシアさん(『ガールズヴィル…』にも参加してました)とジャジーなデュエット・アルバムを出したり…。

で、いろいろした後、2013年あたりから本格的にソロでもアルバム制作。パワー・ポップ好きとか、オールディーズ・ポップ好きの間でマニアックに愛されてきたらしい。

ぼくもその時点で入手できそうなアルバムを片っ端からゲットして聞いてみたのだけれど。もう、なんというか、今、何年代? みたいな。古き良き胸キュン系オールディーズ・ポップ・メロディを紡ぎ出す天才というか。まあ、今の若い世代の耳にこういう旋律やコード進行がどう届くのか、さっぱり見当も付かないけれど、今、60歳代のぼくのような世代のポップス・ファンにしてみると、なんともたまらないエヴァーグリーンな感触というか。そういうものを放ちまくる得がたい才能なのでありました。

プロフィールを見ると、昨今のヒップホップに代表される最新サウンドにアレルギーを覚えているんだとか(笑)。ライヴも最近はいっさいやらず、地元シアトルで自ら名づけた“レトロ・ポップ”の世界に一人多重録音を駆使しながら埋没して暮らしているらしい。

と、そんなダナ・カントリーマンの新作。今回もデジタル・オンリーみたいだけれど、とりあえず出ました。たぶん単独名義の歌ものフル・アルバムとしては7作目ってことになるのかな。元クラトゥのテリー・ドレイパーをはじめ、ワンダーミンツ〜ブライアン・ウィルソン・バンドでおなじみのプロビン・グレゴリー、口笛の超名手であるヘールト・チャトロウ、サックスのジョン・ゴーフォース、トリシア奥さまなど、去年の傑作アルバム『カム・イントゥ・マイ・スタジオ』から引き続きの顔ぶれも含めて多彩な音楽仲間がゲスト参加。

今回もこれまで同様、ポップでキュートなメロディとコード進行とコーラス・ハーモニーに満ちた夢のような1枚に仕上がっている。オープニングを飾る「ミセス・サンシャイン」とか、いきなり最高。この曲、キーはDなんだけど。サビ。Ⅳ度マイナーを介してFのキーに転調して。そこからの展開とか、Gm7→Gm(on C)→Am7→D7(-5)→Gm7→E#m7(-5)/A7→Dmaj7 って感じで。DのキーとFのキーをドリーミーに行き来する。もう、こういう黄金の転調、ぼくはたまんないっす。ごはん3杯いけます。

全14曲、そんなのばっかし。いつもの60年代サンシャイン・ポップみたいな曲はもちろん、今回はボサノヴァとかジャズとかにも触手を伸ばしていて。楽しい楽しい。10CCみたいなポップ・プログレっぽい曲もある。レトロ上等! 大好きだ。この人、アルバムのラストのほうに必ずクリスマス・ソングを入れるのが恒例で。今回も入ってます。デジタルだけじゃなく、アナログ盤で欲しいなぁ…。

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