Disc Review

Underdressed at the Symphony / Faye Webster (Secretly Canadian)

アンダードレスド・アット・ザ・シンフォニー/フェイ・ウェブスター

本ブログでも取り上げた2021年の『アイ・ノウ・アイム・ファニー・ハハ』の後、2022年に24人編成のオーケストラを従えて、過去レパートリー3曲と、新曲と、過去セッションでのお蔵入り曲、計5曲をレコーディングしたEP『カー・セラピー・セッションズ』をリリースしていたフェイ・ウェブスター。

このEPは彼女の楽曲の奥底に横たわっているデリケートで、エモーショナルで、エヴァーグリーンな魅力みたいなものを浮き彫りにしてくれて。ほんと、素敵だったのだけれど。

それに続いて、ようやく新作フル・アルバム、出ました。テキサス州トーニロにあるソニック・ランチ・スタジオに長年の音楽仲間たちと籠もって録音されたという1枚で。共同プロデュースはいつものドリュー・ヴァンデンバーグ。アルバム・タイトルを見て、前EPでのストリングス・アンサンブルとのコラボレーションをより発展させた内容なのかなと思ったら。そんなこともなく。

もちろんストリングス系のオーケストレーションも随所に採り入れられてはいるものの、曲によっては思いきりオートチューンかましてみたり、シンセサイザーを巧みに配してみたり、グロッケン鳴らしてみたり…。散りばめられた要素は確かに多いっちゃ多い。かといってけっして過剰になることなく。むしろ全体的には音数を減らし、テンポも落とし、彼女ならではの歌世界を淡々と、思いのままに綴ってみせている感じだ。

どの曲も、底辺にはスウィート・ソウルっぽい洗練されたコード進行なども盛り込んだフェイさんならではの曲作りのテイストが流れていて。そこに、たとえば「ウォナ・クイット・オール・ザ・タイム」って曲とか、アルバム・タイトル・チューンとか、マシュー“ピストル”ストーセルのドリーミーなペダル・スティール、あるいはウィルコのネルス・クラインによる多彩なギター・サウンドなどが折り重なり、なんとも深いベッドルーム・チェンバー・ポップを生み出していて。ほんと、しびれます。

去年、先行で出たシングル曲「ライフタイム」とか、冒頭を飾る「シンキング・アバウト・ユー」とか、淡々と流れるグルーヴに導かれながら、フェイさんが隙間を縫うように空間を最大限に活かし、印象的なタイトル・フレーズをただただ繰り返していくのだけれど。その吸引力がなんともやばい。たまらない。「レゴ・リング」って曲ではミドル・スクール時代からの友達だという同郷、アトランタ出身のリル・ヨッティーが客演してます。一緒に仲良く音楽ゲームやってるビデオクリップも楽しかった。

バンドキャンプ見たら、CD、LPの他、フツーにカセットも売ってた。そういう時代なのね。

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