Disc Review

Piano Man: 50th Anniversary Deluxe Edition / Billy Joel (Sony Music Labels)

ピアノ・マン:50周年記念デラックス・エディション/ビリー・ジョエル

ビリー・ジョエルという人の本格的デビュー作はどれなのか。これ、けっこうむずかしくて。

1967年にハッスルズの一員としてリリースしたアルバム『ザ・ハッスルズ』か、1970年にアッティラの一員としてリリースした『アッティラ』か、アーティ・リップの下で1971年にリリースされた初ソロ・アルバム『コールド・スプリング・ハーバー』か、1973年に生まれた初の全米ヒット・シングルを含む『ピアノ・マン』か、スターダムを確実なものにした1977年の『ストレンジャー』か…。

でも、やっぱりソロ名義での初ヒットを含む『ピアノ・マン』なんだろうなぁ。ぼくの場合、ヒット曲として表題曲を聞いてはいたけれど、アルバムそのものにはまだ手を出していなくて。アルバムを聞いたのはけっこう後追い。

ちなみに、初めて買ったビリーのアルバムは、まあ主に、今どき珍しい“ドン・ドドン・パン!”ってイントロが入っているよ…と仲間うちでちょっとだけ噂になっていた「さよならハリウッド(Say Goodbye to Hollywood)」収録の『ニューヨーク物語(Turnstiles)』で。そのあとも『ストレンジャー』は当時FMとかでよくかかっていたので最初のうちは買わず、「素顔のままで(Just the Way You Are)」のドーナツ盤だけ持っていたという、ビリー・ジョエルの聞き手としてはずいぶんと歪んだ歩みをたどっているもんで。

そのせいで、アルバムとしての『ピアノ・マン』全体にたどり着いたのは、もう1980年代に入ってからだったような…。

でも、後追いで『ピアノ・マン』を聞いて。なるほど、ここにはジャズも、ロックも、フォークも、カントリーも、ラテンも、コープランドみたいなクラシックの感覚も、多彩な音楽の要素が散りばめられている。本来の拠点である米東海岸だけでなく、当時臨時の拠点としていた西海岸の感触もたっぷり感じられる。あらゆる可能性が処女作には詰まっている、という意味合いで言えば、やはりこの『ピアノ・マン』こそがビリー・ジョエルの本格的デビュー作にふさわしい1枚なのかも。

と、そんな重要作が出た1973年11月から半世紀。オリジナル・リリースからの50周年を記念して、なかなかごっつい記念デラックス・エディションが編まれましたー。

2CD+DVDの3枚組。ディスク1は『ピアノ・マン』のオリジナル・アルバムの2023年DSDマスタリング音源をSACDマルチハイブリッド盤仕様で。普通の2チャンネル・ステレオ・ミックスはもちろん、クアドラLPのアナログ4チャンネル・ミックス・マスター音源も聞ける。うちにはその再生システムがないので聞けてませんが(笑)。

で、ディスク2は、シングル・エディット・ヴァージョンとか、未発表曲も含む貴重なデモ音源とか、ライヴとか、世界初CD化音源入りのレア・トラックス集。もちろん2023年最新マスタリングで。そしてDVDにはビデオ・クリップとか、新旧ライヴ映像とかがぎっしり。世界初DVD化映像も8本。

ジャケットはサンタナとかピンク・フロイドとかでおなじみの7インチ仕様で、1973年当時のUSプレス・キットとか、「ピアノ・マン」日本盤7インチ・シングル・ジャケットとか、日本盤LP帯4種の復刻レプリカとか、メモラビリアも大量投下。ビリーの本格的出発点を多角的な視点から評価し直すことができる豪華版です。

これ聞いてから、久々の新曲「ターン・ザ・ライツ・バック・オン」に触れ直すと、これまた深い感慨が…。

ピアノ・マン 50周年記念デラックス・エディション SACDマルチ・ハイブリッド盤 (7インチ紙ジャケット仕様) (特典なし)
ソニー・ミュージックレーベルズ

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