Disc Review

Try For The Sun / Sandy Salisbury & Curt Boettcher (Sundazed Music)

トライ・フォー・ザ・サン/サンディ・ソールズベリー&カート・ベッチャー

カート・ベッチャーとサンディ・ソールズベリー。ご存じ、1960年代サンシャイン・ポップを代表するグループ、ザ・ミレニアムのメンバーですが。

ミレニアムといえば、1968年のアルバム『ビギン』。ベッチャーはここでプロデューサーをつとめたほか、珠玉のコーラス・アレンジを聞かせたり、「ジ・アイランド」「ゼア・イズ・ナッシング・モア・トゥ・セイ」といった名曲を提供したり。ソールズベリーのほうも必殺の「霧のファイブ・エイエム(5 A.M.)」を提供したり…。

このアルバム、当時最先端だった8チャンネルのマルチ・トラック・レコーダーを2台同期させながら制作された画期的な1枚で。素晴らしい仕上がりだったものの、なぜかリアルタイムには正当な評価を得ることができずじまい。ミレニアムはこれ1作を残してグループとしての活動を終えてしまった。

けど、後年、徐々に再評価の気運が広まって。サンシャイン・ポップというか、ハーモニー・ポップというか、ソフト・サイケデリック・ポップというか、日本では独自に“ソフト・ロック”とか呼ばれているあの種の音楽を代表するグループとして一般に認識されるようになったわけですが。

そんな再評価ムーヴメントの中、オフィシャルにはたった1枚のアルバムしか残さなかったミレニアムまわりの未発表音源というのが続々と発掘リリースされ始めて。ずいぶんいろいろ買いました。買わされました(笑)。中には関連音源をかき集めたボックス・セットみたいなものまであって。楽しくもあり、大変でもあり。そういうお仲間、少なくないのでは?

で、さらなる未発表もの、来ましたよー。1966年の夏、ハワイからカリフォルニアへやってきたソールズベリーは、当時アソシエーションのプロデューサーに起用されてノリノリだった新進気鋭のベッチャーに誘われてミレニアムの前身的バンドのひとつであるザ・ボールルームを組んだのだけれど。その前後の時期、彼らが出版用に録った未発表デモ音源の蔵出しです。

ヴァイナルLPとCDがあって。LPには全14曲収録。そのうちベッチャー作品が5曲、ソールズベリー作品が9曲。「スペル・オン・ミー」の初期デモとかも聞ける。CDにはさらにソールベリー作品2曲と、ベッチャー&ソールズベリーがふたりでやりとりしながら、のちに「セシリー」へと発展する曲のメロディ作りを試行錯誤している短めの音源1曲が加わる。デモ音源だけに、アコースティック・ギターの弾き語りを中心に構築された簡素な音像。コーラスワークも当然、超シンプルで。でも、そのぶんボールルーム〜ミレニアムの音楽性の骨子のようなものがわかりやすく提示されているようで。実に興味深い。

まだブツが手元になく、サブスクのストリーミングで音を聞いているだけの段階なのでライナーとか読めていないのだけれど、ソールズベリーへの最新インタビューとかも含まれているそうで。それも面白そう。はよ読みたい。

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