Disc Review

Till the Light Comes / Jackie Greene (429 Records)

JackieGreene

ティル・ザ・ライト・カムズ/ジャッキー・グリーン

みなさん、ブライアン・ウィルソンの時間限定ストリーミング、聞きました? 待望の新作『ブライアン・ウィルソン・リイマジンズ・ガーシュイン』の全曲ストリーミング。これ、本当に深い1枚です。単なる企画ものとして片付けられない、アメリカン・ポップ・ミュージックの縦軸みたいなものがきっちり音像に刻み込まれていて。

ロックンロールが生まれるはるか前、20~30年代にこれほどポップで、ブルージーで、革新的で、何よりも美しい音楽を生み出した偉人がいて。その本質を今なお、けっして懐メロとしてでなく、世紀を超えて受け継ぐもうひとりの偉人がいて。そんな二つのグレイトな才能による夢のコラボレーションなのだから。これはたまりません。まあ、詳しいことは、またリリース後に本ブログででも。その前に、米盤発売日の翌日、18日の新宿ネイキッド・ロフトで高田漣くんをゲストに迎えて、爆音で聞いて、細部まで味わって、解析して、ヒザうって、飲んで、食って、ガーシュイン&ウィルソンの世界を堪能しましょう。左の情報欄を参照のうえ、こぞってご参加ください。

聞くところによると、国内盤は12月リリースとの噂。すごい時差だな、こりゃ。

というわけで、今回は別のピック・アルバムのご紹介。もう30歳くらいになったのかな。ぎりぎりまだ20代かな。アメリカのシンガー・ソングライター・ファンにはおなじみ、ジャッキー・グリーンの新作が出た。何枚目だ? レーベルをけっこう渡り歩いている人なのでよくわからないけど、少なくともぼくが持っている彼のアルバムはこれが7枚目。かつてニューヨーク・タイムズが“プリンス・オヴ・アメリカーナ”と呼んだころの音像と比べると、今回のアルバムはずいぶんとポップな手触りに仕上がってはいるのだけれど。

ポップとはいえ、70年代半ば、ジェームス・テイラーとかエリック・アンダースンとかジャクソン・ブラウンとかキャロル・キングとか、当時のシンガー・ソングライターたちが名うてのスタジオ・ミュージシャンたちの助けを借りながら、ちょっとアダルト・コンテンポラリーっぽい音を聞かせるようになった、あのころのテイストに近かったりして。当時、若かりしころのぼくは複雑な思いを抱いたものだけど。今ではすっかり甘酸っぱい思い出(笑)。なもんだから、今回のジャッキー・グリーンの方向性にも胸ときめいちゃったりして。屈折した愛を覚えてます。

もうちょい前、60年代後半のフォーク・ロックっぽいニュアンスも曲によっては感じられたり。これも泣ける。2002年のデビュー当時は歌詞面も含めてボブ・ディランとかトム・ウェイツとか、その辺の人たちがよく引き合いに出されていたけれど。その味は持続しつつ、メロディ面にキャッチーなフックを意識的に用意するようになった感じ。オルガンをさりげなく活かしたアレンジもかっこいい。

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429 Records
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