Disc Review

Swinging Stars / Mapache (Innovative Leisure/Calico Discos)

スウィンギング・スターズ/マパチェ

先日、新宿ロック・カフェ・ロフトでのCRTスティーリー・ダンまつり。とても盛り上がりました。いらしてくださったみなさん、ありがとうございます。ドナルド・フェイゲン監修で続いている最新リマスター・シリーズが初期3作までしか出ていない段階ということもあり、今回は徹底的に初期ダンしばり。フェイゲン&ベッカーがジェイ&ジ・アメリカンズに関わっていた超初期の音源なども含めて、まだ通常のバンド・フォーマットを崩さず活動していた時期のスティーリー・ダン・サウンドをたっぷり楽しみました。

でも、当然ながら『うそつきケイティ(Katy Lied)』以降はほとんど触れずじまいだったので(笑)。そのあたりはまた機会を改めて。

で、次回は9月18日、敬老の日の開催です。てことで、テーマは“敬老”! お年を召してなお、若いころ以上に元気なパフォーマンスを展開してくれているありがたいアーティストたちの歌声をいっぱい味わいながら、元気をいただこう、と。そういうおめでたい回です。

90歳を迎えてなおニュー・アルバムをがんがん出しまくっているウィリー・ネルソン、81歳時点での来日公演が超強力だったボブ・ディラン、コロナ禍にSNSを通じてほぼ毎日のようにピアノ弾き語りを届けてくれた現在84歳のニール・セダカ、80歳代にもかかわらず今年に入って充実の新作アルバムをそれぞれ届けてくれたスモーキー・ロビンソンやポール・サイモン、80歳でついにライヴ・シーンに本格復帰したジョニ・ミッチェルなど…。

年とったら隠居…が当たり前だった時代はもはやどこへやら。年輪を重ねたアーティストにしか表現しえない深く豊かな世界観を、敬老の日、存分に味わいましょう。ちなみに今年の9月25日でCRTは25周年を迎えます。会場に足を運んでくださるみなさまのパワーに、ご長寿アーティストならではのパワーもかけ合わせ、さらなるロングラン・イベントを目指したいと思っております。25周年のお祝いも併せて盛り上がりましょう。詳細、こちらへ。


というところで、本日のピックアップ・アルバム。何年か前、セカンド・アルバム『フロム・リバティ・ストリート』を紹介したことがあるロサンゼルスのフォーク/カントリー・ユニット、マパチェの新作です。『フロム・リバティ…』を取り上げたエントリーでも触れているのだけれど、ちょうど新型コロナ禍が本格化した時期のリリースだったため、事後のプロモーション・ツアーとかが思うようにいかず、いろいろ苦労があったみたい。

でも2021年にスティーヴィー・ワンダーやビーチ・ボーイズの作品などを取り上げたマニアックなカヴァー・アルバム『3』を出して、去年、2022年にオリジナル中心のアルバム『ロスコーズ・ドリーム』を、それぞれリリースして。今年6月にはメンバーのひとり、サム・ブラスッチが今年の6月、素敵な初ソロ・アルバム『オフ・マイ・スターズ』を出すなど、コロナにめげず着実に歩みを進め…。

で、いよいよ本作、5作目のフル・アルバムとなる『スウィンギング・スターズ』を届けてくれた、と。マイ・モーニング・ジャケット、ウォー・オン・ドラッグズ、ケイト・ル・ボンらが愛用しているというカリフォルニア州マリン・カウンティのスタジオ“パノラミック・ハウス”に音楽仲間たちと1週間こもり、じっくり集中しながら、密なコミュニケーションの下でレコーディングされた1枚らしい。これまでのアルバムに比べると、かなり仕込みは本格的という感じだ。

マパチェは基本的にハイスクール時代からの仲間、サム・ブラスッチ(ギター、キーボード、ヴォーカル)とクレイ・フィンチ(ギター、ヴォーカル)によるデュオとして活動してきたのだけれど。今回のアルバムからドラムのスティーヴ・ディドロットも正式メンバーになったみたい。彼は1曲作品提供もしている。

で、プロデュースおよびエンジニアリンはいつものダン・ホーンが手がけていて。ペダル・スティールやベースもプレイ。この4人による演奏が本作の基本だ。で、曲によってダン・ホーン絡みのアラー・ラーズからスペンサー・ダナムがベースで参加していたり、なんとデイヴ・ローリングスが1曲アコースティック・ギターを弾いていたり。

得意のスペイン語で歌われる「センティール」で幕開け。以降、ブラスッチとフィンチ、それぞれの単独オリジナルあり、共作あり、ディドロットの提供曲あり。ポップ・マエストロとしてのブラスッチと、コズミック・カウボーイとしてのフィンチ、それぞれの作風を尊重しつつ、デュオ〜バンドとしての個性もきっちり伝えてくれる素敵な仕上がりだ。グレイトフル・デッドみたいだったり、グラム・パーソンズみたいだったり、トッド・ラングレンみたいだったり、アンディ・フェアウェザー・ロウみたいだったり。いい感じに力が抜けていて、飄々としていて、オーガニックで、心地よいです。

うまくタイミングが合わず紹介しそびれていたブラスッチの超ごきげんなソロ・アルバムのほうのリンクも下に貼っておくので、ぜひ併せてお試しください。

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