Disc Review

Love for the Underdog / John Andrews & The Yawns (Woodsist)

ラヴ・フォー・ジ・アンダードッグ/ジョン・アンドルーズ&ザ・ヨーンズ

お休み続きで。平日更新を勝手な基本ルールに続けている本ブログで紹介できるニュー・リリースの数が、先週・今週、どうしても限られてしまっているわけですが。でも、ここんとこいいアルバムが続々出ていて。本来ならばナタリー・マーチャント(Apple Music / Amazon / Tower)とか、ザ・ナショナル(Apple Music / Amazon / Tower)とか、先日もちらっと触れたタジ・マハール(Apple Music / Amazon / Tower)とか、そのあたりの充実の新作も紹介しておきたいところ。

とはいえ、まあ、そういうでかいタマは他のサイトとか音楽誌とかでも取り上げられているし。どれも素晴らしいアルバムばかりで、ぼくがあえてご紹介するまでもなく、入手すれば絶対に楽しめること間違いなしだし。なので、そのあたりは連休明けに機会があったらもしかして改めて触れるかも…的なことにしておいて。今朝も世の中的にはなかなか取り上げられる機会が少なそうな細かめのとこ(笑)、いきますね。元ウッズのキーボード、現在はキルトのドラマーとして、あるいはカット・ワームズのサポートなどとしても活動するマルチ・インストゥルメンタリスト/シンガー・ソングライター、ジョン・アンドルーズのソロ・プロジェクト“ジョン・アンドルーズ&ザ・ヨーンズ”の4作目です。

2021年の前作『クックブック』で聞かせていたメロウなポップ・サイケ路線というか、ハーモニー・ポップ路線というか、その辺の感触はそのまま。ただ、前作がほぼひとりでの多重録音作品だったのに対し、今回はカット・ワームズのマックス・クラークをはじめブルックリン系の音楽仲間たちがバックアップ。ニューヨークのスタジオやアパートメントで一発録りに近い形でレコーディングが行なわれたみたい。キルト、リナ・タルグレン、ライアン・パワー、ジョン・ゾーンなどとも交流のある、やはりブルックリン系のサイモン・ヘインズ編曲によるストリングス・アンサンブルも導入して、ジョン・アンドルーズ独特の1970年代風味ただようソフト・ロック・テイストをゆるやかにサポートしてみせている。

聞いていると、ハリー・ニルソン、コリン・ブランストーン、マーゴ・ガーヤンなど、往年の多彩なポップ・クリエイターたちの名前が次々とイマジネイティヴに脳裏をよぎって。でも、都会のスナップショット的な歌詞も含めてちゃんと今の時代の空気感のようなものも反映したベッドルーム・ポップっぽく仕上がっているところがポイントか。

オープニング・ナンバー「チェックス・イン・マイ・メール」の“ぼくが今まで愛した人はみんな、夢見たことを全部話してくれた/今、その夢はすべてぼくの夢のよう/ぼくはまだみんなを愛しているってことかな…”という歌詞がなにやら印象的。「スターヴィング・アーティスト」って曲では“まるで映画スターだ、でも映画は終わっている/誰も知らないセレブのように暮らしている/なんとかやりくりするために毎日一生懸命/倹約したレシートでは取り戻せないものもある”とか歌っているし。なんだかシニカル。

アルバム中、個人的にはいちばん好きだった、どこかシネマティックな「フォース・ウォール」って7分超の曲でも、ジュディという、んー、恋人なのかな、そういう相手と語り合いながら、時の移ろいのようなものに言及していて。そこで歌われる“理解するまで何年もかかるものもある/でも、何年も前と同じ人なんていない”というフレーズも気になった。

この人、ミュージシャンとしてだけでなくアニメーション作家としても活動しているようで。今も各地のコーヒーショップやギャラリーなどでスケッチふうの手書きアニメーションを上映しながら音楽をパフォーマンスしたりしているのだとか。そんなアニメ作家としての腕前も発揮したビデオクリップも楽しい。

昨日のジェブ・ロイ・ニコルズの盤ともども、ゴールデンウィークのお散歩にぴったりかも。フィジカルはこれまたヴァイナルのみかな? そういうの、また増えてきたな。

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