Disc Review

Wait Til I Get Over / Durand Jones (Dead Oceans)

ウェイト・ティル・アイ・ゲット・オーヴァー/ドゥラン・ジョーンズ

アーロン・フレイザーとともに結成したインディケーションズを率いて活動中のドゥラン・ジョーンズ。ソロ作、出ました! ひと足先に出たアーロンのソロ・アルバムから2年。その後、バンドとしての新作をひとつ間に挟んで、ついにリリースされた待望の1枚です。

ドゥラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズというと、必殺のセヴンティーズ・スウィート・ソウルというか、ファンキーでキャッチーなダンス・グルーヴというか、とにかくごきげんなレトロR&Bバンドとしておなじみなわけですが。あの独特の方向性っていうのは、ドゥランとアーロン、それぞれのユニークな趣味の交わる、実にピンポイントな地点の上に成り立っているんだなという事実が、彼ら二人のソロ・アルバムを聞くとよくわかって面白い。

アーロンのソロではインディケーションズっぽい1970年代ソウル・ヴォーカル・グループっぽい曲だけでなく、ギル・スコット・ヘロンみたいなやつとか、アイザック・ヘイズっぽいやつとか、多彩な音作りを聞くことができたけれど。こちら、ドゥランさんのソロ作もインディケーションズの作品からは想像できないくらい多彩な音楽性が交錯していて。盛り上がる。

ピアノに乗せてストリングスがノスタルジックな光景を紡ぎ出すオープニングの弾き語り調バラード「ジェライ・マリー」に始まり、それが故郷であるルイジアナ州ヒラリーヴィルをめぐるナレーションへ。ヒラリーヴィルの歴史と、彼の祖母が初めてその地に移り住んだ時の様子が語られて…。

冒頭からいきなりストリングスを導入してくる感触とかは往年のダニー・ハザウェイを想起させるし、実際、アルバム後半にはラップも盛り込んだハザウェイのカヴァーもある。以降、ビル・ウィザース的なフォーキーでソウルフルな展開あり、必殺のハチロク系R&Bバラードあり、ローファイな音像に包まれたブルージーなものあり、コーラスを伴ったゴスペルものあり、スティーヴィー・ワンダーとサム・クックが入り乱れるみたいなシャッフルものあり、サンダーキャット的な今どきのジャズ的アプローチあり…。

まだ歌詞を深く味わうまでには至っていないのだけれど、たぶん全体的には南部で育って、そこに根付く価値観のようなものから脱け出そうとあがき、他の地で成功をつかみ、でもやがて再び物理的にも精神的にも音楽的にも故郷へと帰って行く、みたいな? そんなドゥランさんの思いが真摯に描かれている感じ。南部の黒人コミュニティにおける若きクィアの思いを綴った「ザット・フィーリング」って曲とか、静かな決意の下での勇気あるカミングアウトだったりして。

インディケーションズではこれまで見せることがなかった自分自身を彼なりのやり方でさらけだした1枚。とともに、この真摯さ、豊かさ、幅広さが背景にあってこそのインディケーションズなのだなと思い知ることもできる1枚。かっこいいです。去年のドゥラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズの来日公演、スケジュールが合わなくて…というか突然の体調不良とかもあって見ることができなかったんだよなぁ。今さらながらに悔やまれます。

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