Disc Review

Somewhere Under the Rainbow / Neil Young with the Santa Monica Flyers + High Flyin' / The Ducks (Shakey Pictures/Reprise Records)

サムホエア・アンダー・ザ・レインボウ/ニール・ヤング・ウィズ・ザ・サンタ・モニカ・フライヤーズ+ハイ・フライン/ザ・ダックス

ボブ・ディランの『シャドウ・キングダム』、リリースが告知されましたねー。6月2日発売だとか。次々来ますねー。

で、次々来るといえばニール・ヤングですが。ヤングさんが過去、海賊盤でしか聞くことができなかったライヴ音源をオフィシャルな形でリリースする“オフィシャル・ブートレッグ・シリーズ”。その最新作がまたふたつ、リリースされましたよー。

発売順とシリーズの通し番号とが一致していないのだけれど、今回出たのは“OBS 02”という通し番号が振られたザ・ダックスの『ハイ・フライン』と、“OBS 06”という番号のニール・ヤング・ウィズ・ザ・サンタ・モニカ・フライヤーズ名義の『サムホエア・アンダー・ザ・レインボウ』。

ザ・ダックスのほうはニール・ヤングと「マイ・マイ・ヘイ・ヘイ(アウト・オヴ・ザ・ブルー)」を共作したシンガー・ソングライターのジェフ・ブラックバーン(ギター)がモビー・グレイプのオリジナル・メンバーとしてもおなじみのボブ・モズレー(ベース)や、後にドラム会社を作ることになるジョニー・クラヴィオット(ドラム)、そしてヤングさんを誘って1977年に結成したバンド。とはいえ、ほんの短期間、サンタクルーズでライヴ活動しただけで終わってしまった幻のスーパー・グループだった。

ブラックバーン、モズレー、そしてヤングさんがそれぞれオリジナル曲を持ち寄って、それぞれの曲でそれぞれがリード・ヴォーカルをとって、クラヴィオットもロックンロールとかカントリーとかをいくつかカヴァーして。ヤング関連で言えば、バッファロー・スプリングフィールドとかクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングとか、あの手の民主的なバンドと同じような感じを目指していたのかもしれないのだけれど。

ニール・ヤングがクレイジー・ホースとけっこうがっちりした契約を結んでいたこともあり、当時ヤングさんはクレイジー・ホース以外とツアーに出てはいけなかったらしく。あまり自由に活動できなかったのだとか。ヤング抜きでの活動にもトライしたものの、あまりウケず、かといってヤング入りだと彼の曲を聞きたがる観客ばかりが全米中から集まってしまって…みたいな。どうにもうまくいかず。結局、ほんの7週間でザ・ダックスは活動停止に追い込まれてしまった。

そんなザ・ダックスの貴重なライヴ演奏音源からハイライトをピックアップして構成されたCD2枚組(LP3枚組)が『ハイ・フライン』だ。ニール・ヤングが歌っているのは本人作の「アー・ユー・レディ・フォー・ザ・カントリー?」「セイル・アウェイ」「ヒューマン・ハイウェイ」「リトル・ウィング」「ミスター・ソウル」の5曲。加えて、クレイジー・ホースのレパートリー「ゴーン・デッド・トレイン」も演奏されているとはいえ、確かにちょっと物足りないかも。もちろん、貴重なことは確かだし。いい音でオフィシャル・リリースされたザ・ダックスというのはなかなかに感動的ではありますが。

でも、やっぱりもう1枚、ザ・サンタ・モニカ・フライヤーズの『サムホエア・アンダー・ザ・レインボウ』のほうがニール・ヤング・ファンにはたまらないはず。サンタ・モニカ・フライヤーズのメンバーは、ニルス・ロフグレン(ギター)、ベン・キース(ペダル・スティール)、ビリー・タルボット(ベース)、ラルフ・モリーナ(ドラム)。そう。要するにフランク“ポンチョ”サンペドロ引退後の近年のクレイジー・ホースの3人にベン・キースが加わったラインアップ。この顔ぶれで1973年11月5日、英国ロンドンのレインボウ・シアターで録音されたCD2枚組(こちらはLPも2枚組)だ。

ニール・ヤング・アーカイヴズの“パフォーマンス・シリーズ”のVol.5として2018年にリリースされた『ロキシー:トゥナイツ・ザ・ナイト(今宵その夜)ライヴ』と同じ、やがて1975年にリリースされることとなるアルバム『今宵その夜(Tonight's the Night)』のレコーディング後に行なわれたツアーの一環。

この時期、ヤングさんの周りではクレイジー・ホースのダニー・ウィッテンや、ローディーのブルース・ベリーら、親友でもあり、音楽活動上の重要なパートナーでもあった仲間たちが相次いでドラッグのオーヴァードウズで他界。それを受けて制作された『今宵その夜』はだからかなり陰鬱なムードをたたえており、レコード会社もリリースに消極的で。結局アルバムが出るのは1年以上先のことになるわけだけれど。

そんな状況下のツアー。それだけに、深い悲しみのただ中にあったメンバーたちはステージ上でいつも泥酔状態で。そのうえセットリストはまだ発売もされていない新作からのものばかり。本ライヴを聞いても、やがて『今宵その夜』に収録される全13曲中、ピアノ弾き語りの「バロウド・チューン」、クレイジー・ホースとのライヴ「レッツ・ゴー・ダウンタウン(Come on Baby Let's Go Downtown)」、ストレイ・ゲイターズと録音した「ルックアウト・ジョー」以外、サンタ・モニカ・フライヤーズがバックをつとめた9曲すべてが演奏されている。

コンサート終盤にはバッファロー・スプリングフィールド時代の「フライング・オン・ザ・グラウンド・イズ・ロング」とか、のちに『カムズ・ア・タイム』に収められる「ヒューマン・ハイウェイ」とか、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングとして発表した「ヘルプレス」とか、『今宵その夜』以外の曲も弾き語り基調で歌われるし、このツアー直前に出たライヴ盤『タイム・フェイズ・アウェイ』で初お披露目された「ドント・ビー・ディナイド」とか、クレイジー・ホースとの初期傑作「カウガール・イン・ザ・サンド」とかはバンド演奏されているけれど、当時ニール・ヤングを大スターにしてくれたヒット・アルバム『ハーヴェスト』からの曲はひとつもなし。

伝えられているエピソードとしては、観客はえんえんブーイング状態だった、「孤独の旅路(Heart of Gold)」をやれ! 「オールド・マン」をやれ! と、みんなが憤慨していた、と。まあ、実際本作を聞くと、確かにヤジってる客もいるものの、けっして誰もがみんな憤慨しているわけでもなく。楽しんでいるお客さんが大半。演奏自体も悪くない。でも、なんとなく全体として演者と観客のコミュニケーションはけっしてうまくいっていなかった印象が漠然とあったのかも。当時の英メロディメイカー紙が掲げた“Go Home Neil Young!”という見出しはいまだ伝説として語られているし、マネージャーのエリオット・ロバーツも、こんな悲惨なツアーは即刻中止し、アメリカに帰ってクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの再結成ツアーをして大儲けしろと必死に説得していたらしいし。

プロデューサーのデヴィッド・ブリッグスのふんばりもあって、ツアーはなんとか継続したものの、そんなごたごたの中、本ロンドン公演は正式にライヴ・レコーディングされることなく終わってしまった。そのせいで、ぼくたちはこのときのサンタ・モニカ・フライヤーズのパフォーマンスをこれまで海賊盤でしか体験することができなかったわけだけれど。ニール・ヤングのライヴ・ヒストリーを克明に綴ったバイブル的一冊『ゴースツ・オン・ザ・ロード』の著者としておなじみのスーパー・ファン、ピート・ロングがこのコンサートの模様をこっそりプライヴェート録音しており、その音源の音質を最新リマスタリング技術で整えて今回のオフィシャル・ブートレッグ『サムホエア・アンダー・ザ・レインボウ』がめでたく完成したのでありました。

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