Disc Review

Takin' It Back / Meghan Trainor (Epic)

テイキン・イット・バック/メーガン・トレイナー

ほんとはテイラー・スウィフトの新作とか取り上げたいのだけれど。アナログ盤注文しちゃったら、発売が1週間先延ばしになっちゃって。しかも、曲がいっぱい増えたデジタル・リリースとかまで出ちゃって。盤が届く前に作品の状況が大きく変わっちゃうという(笑)、近年のテイラーならではの悩ましいワナにハマってしまっております。

なもんで、テイラーではなくこっちのコの新作、紹介します。メーガン・トレイナー。このコが本格デビューを果たしたころ、あちこちのラジオ番組で曲をかけたり、雑誌に記事書いたりしまくって、もちろん本ブログでも2015年の初メジャー・アルバム『タイトル』を、まあ、ちょっと軽めにではあるものの、取り上げて盛り上がったりして。“健太さん、ほんとにメーガン好きですねー”とか仕事仲間から呆れらておりましたが(笑)。

まじ、デビュー当初のこのコのナチュラルなオールディーズ・ポップ感覚にはぶっとんだものです。大いにハマった。どういう素性のコなのか、当初は何も知らなくて。ほどなく、いろいろ細かい情報を教えてもらってびっくりした。なんでもメーガン、15歳のころ、スパンピナート・ブラザーズの弟のほう、NRBQのメンバーでもあったジョニー・スパンピナートにギターを教わっていたそうで。やっぱりスジがいいというか。

1993年生まれながら、もともと子供のころから父親の影響でドゥーワップやジャズなど1950年代の音楽にどっぷり浸って、フランク・シナトラがレパートリーに取り上げていたようなタイプのソングライターたちに憧れながら育った、と。あの、今どき得がたいエヴァーグリーンなポップ・センスはそうやって芽吹いたものだったわけだ。

こりゃ、うれしい新人が出てきたなとワクワクした。レゲエやソカも大好きだとのことで。そうしたグルーヴも交えた2014年のシングル「オール・ザット・ベース」が8週連続全米1位にランク。グラミーでは最優秀新人賞を獲得。以降、マルチ・プラチナ・シングルも8枚。プラチナ・アルバムも2枚。ワールド・ツアーも3回。ソングライターとしての楽曲提供も多数。2016年ごろまではチャート・アクション的にも派手に推移して。最近はTikTokとかでもそれなりにバズってるらしい。

ただ、セカンド以降は、テイラーを筆頭とする今どきの女の子シンガー・ソングライター的な方向性にぐっと寄り気味になってみたり、ヒップホップ色を導入して昨今のダンスものっぽくなってみたり。『タイトル』で無邪気に炸裂させていたキュートなオールディーズ・ポップ感覚が薄らいでいったのも事実。TikTokとか全然わからないおぢさんとしてはなんとも寂しい気分を味わっていた。

が、今回出たメジャー4作目の新作『テイキン・イット・バック』では、アルバム・タイトルが示唆しているように、デビュー当時の持ち味を意図的に取り返した感じ。やったね。うれしい。本人も今回の新作は“『タイトル』ヴァージョン2”みたいなものだと発言しているし。おぢさん、もう大喜びなのでありました。

俳優のダリル・サバラと結婚して、ママにもなって…。そういう環境の変化もあっての原点回帰という感じ? でも、そういうオールディーズ・テイストのポップ・チューンに、何でも簡単に、完璧にこなしているように見える明るい私でも、他の人には打ち明けられない悩みを抱えていたりするものなのよ…的な歌詞が載せられていたりして。いやいや、人生経験積んだのねー。

コーラスならおまかせのペンタトニックスのスコッティ・ホーイングとか、ソウルフルな味でおなじみテディ・スウィムズとか、ドミニカのナティ・ナターシャとか、トランペットのアルトゥーロ・サンドヴァルとか、ロック・シティのセロンとかが曲によって客演。弟のジャスティン・トレイナーや、ジャン・ストーン、ショーン・ダグラスらも協力しています。

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