Disc Review

This is Brian Jackson / Brian Jackson (BBE Records)

ジス・イズ・ブライアン・ジャクソン/ブライアン・ジャクソン

ブライアン・ジャクソンというと、クール&ザ・ギャングとか、ボビー・ハンフリーとか、フィリス・ハイマンとか、ウィル・ダウニングとか、ロイ・エアーズとか、グウェン・ガスリーとか、様々なアーティストとコラボレートしたりしてきた超ごきげんなプロデューサー/ソングライター/キーボード奏者/フルート奏者でありますが。

やはり何と言っても有名なのがギル・スコット=ヘロンとのコラボ作品群だろう。1971年から1980年にかけて9作(うち7作が連名)のアルバムを共作していて。そのすべてが名盤。スコット=ヘロンを歌ものの世界へと導き、「レヴォルーション・ウィル・ノット・ビー・テレヴァイズド」や「エンジェル・ダスト」など数々の名曲を生み出した、スコット=ヘロンにとって最強のパートナーだ。

そんなジャクソンさんの単独名義での新作、出ました。しかも、大半が歌もの!

2018年に人気シリーズ“ジャズ・イズ・デッド”の第8集としてこの人の名をフィーチャリング・アーティストとして冠したごきげんなアルバムが出たことがあったけれど、あれはシリーズ主宰のエイドリアン・ヤング&アリ・​シャヒード・ムハマドがあくまでもメインのプロジェクトってことで。純粋にソロ名義でのリリースということになると、ギル・スコット=ヘロンやロイ・エアーズも参加していた2000年の『ガッタ・プレイ』以来ということになるのかな。とすると22年ぶり。いやいや、とんでもなく久しぶりだ。うれしい。

もちろん収録曲すべて今回初出の音源だ。とはいえ、実際に大半の曲が書かれたのはずいぶんと昔のことだとか。というのも、ジャクソンさんは1976年、ギル・スコット=ヘロンとアルバム『ブリッジズ』(発表は1977年)のレコーディングを行なっていたころ、並行してソロ・プロジェクトも進めていたそうで。曲を書いてはデモ・テープを録って準備していたらしい。が、その計画は結局実現せずじまい。ソロ・アルバムはデモ段階でお蔵入りしてしまった。

が、ニューヨーク系の凄腕ミュージシャンが集った流動的プロジェクト、フェノメナル・ハンドクラップ・バンドの中心メンバーであるダニエル・コラスがそのデモ・テープの噂を聞きつけた。2018年、前述したエイドリアン・ヤング&アリ・​シャヒード・ムハマドとのアルバムが世に出る直前のこと。ダニエル・コラスは、1976年に計画されていたブライアン・ジャクソンのソロ・アルバムを、今、世紀を超えて年輪を重ねたご本人が完成させたらどんな作品に仕上がるのか? という、なんともイマジネイティヴな夢プロジェクトをジャクソンさんに持ちかけた。ジャクソンさんも面白い挑戦だと感じた。

実のところ、ジャクソンさんはスコット=ヘロンの遺族との間にいろいろあるらしく、なかなか思い通りに自身のレコーディングを進めることができない状況なのだとか。が、その辺も含めてダニエル・コラスがなんとか調整。ソロ名義でのレコーディングがスタートした。ブルックリンのウィリアムズバーグにコラスが所有しているスタジオで週2回くらいずつ、1年弱にわたって作業が続いた。

ブライアン・ジャクソンがキーボードとフルート、そして過去数曲でしか本格的に披露したことがなかったリード・ヴォーカルを担当。ヴィクター・ブラウン(ベース)、クラレンス“ビンキー”ブライス(ギター、ベース)、ドメニカ・フォサティ(アルト・フルート)らジャクソンの旧友たちに加え、ムーサ・ファデラ(ドラム)、カイト・サンチェス(ドラム)、ジュリエット・スワンゴ(ヴォーカル)、モリカ・ハイドマン(ヴォーカル)らダニエル・コラスの人脈も合流。

お蔵入りしたサウンドトラック曲も掘り起こされた。マルコム・セシルと1980年代初頭にあれこれ揉んだという曲もよみがえった。こうして本作『ジス・イズ・ブライアン・ジャクソン』が完成に至った、と。

というわけで、全編、まあ全部で8曲だけではあるけれど、超ごきげんな、モノホンの手触り溢れるジャズ・ファンクの雨アラレ。ファンキーなフルートとか、ジャジーでスウィートなローズ・ピアノとか、ミョ〜ンとうねりをあげるアナログ・シンセとか、躍動的なコンガとか、エキゾチックなストリングスとか、サイケなシタールとか、えぐいクラヴィネットとか、当時の音の感触をよみがえらせるために絶対必要な要素がこれでもかと交錯。ダニエル・コラスの絶妙な采配の下、昨日今日じゃ絶対に実現しえないブライアン・ジャクソンのぶっといグルーヴが渦巻いている。

かっこいいです。まじ。新しいとか古いとか、ないね、まじに。

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