ナイトジャー・イン・ザ・ノーザン・スカイ/アンナ・グレタ
アイスランド出身、現在はスウェーデンを本拠に活動するシンガー・ソングライター/ジャズ・ピアニスト、アンナ・グレタのソロ・デビュー・アルバム。
チマタでは“北欧のノラ・ジョーンズ”的なイメージで注目されているそうで。なるほど。“北空の夜鷹”というアルバム・タイトルからして、なんとも、こう、雰囲気だなぁ…みたいな。
アイスランドのレイキャビク近郊生まれ。お父さんのシグルズール・フロサソンは、北欧ジャズのファンにはおなじみのサックス・プレイヤー。こちらも“アイスランドのポール・デスモンド”とか呼ばれているそうで(笑)。その影響もあって、アンナさんも幼いころからビル・エヴァンスとか、そうしたジャズ・アーティストに惹かれながら育った。音楽への目覚め、ピアノへの目覚めはそれよりも前、ビートルズの「レット・イット・ビー」を聞いたときだったとか。
2014年、スウェーデンへ。ストックホルム音楽大学で学ぶようになると、すぐにその才能に注目が集まり、アイスランド・ミュージック・アワードのジャズ部門を受賞をしたほか、多くの音楽賞にノミネートされるようになった。2019年にはギタリストのマックス・シュルツとの連名でアルバム『ブライター』もリリースしている。そちらはピアニストとしての1枚で、名義は“アンナ・グレタ・シーグルザルドウッティル”というややこしいものだったけれど。
このほどその名義を“アンナ・グレタ”へとシュッとさせて待望のソロ・デビュー。今回はシンガーとして、あるいはソングライターとしての魅力も全面に押し出した内容になっている。「ザ・トンネル」という曲のみ米国の詩人、ロバート・クリーリーの詩にアンナが曲をつけたもの。あとは全曲、自身の作詞作曲だ。アート・リンゼイや坂本龍一との共演で知られるベースのスクーリ・スヴェリソン、アイスランドを代表するドラマーであるエイナル・スケーヴィング、ギタリストのヒルマー・イエンソンら北欧の名手たちがバックアップ。父親、シグルズール・フロサソンも参加している。
ジャジーで、クラシカルで、フォーキーで…。静謐さと穏やかさとナチュラルさと、でもどこか不思議な感情の揺らめきとが魅力的に交錯する。ほどよい安らぎとほどよい緊張感。もちろん、ピアノ・ソロも素晴らしいし。今後が大いに楽しみな存在です。
日本のショップだとフィジカルは今月中旬…という感じみたいだけど。もうサブスクで公開されているので、まずは音に接してみて。