Disc Review

Voyage / ABBA (Polar Music/Universal Music)

ヴォヤージ/ABBA

わが家では能地祐子が子供のころからの超特大リアルタイムABBAファンで。やはり筋金入りのABBAファンであるダリアン・サハナジャとすっかり意気投合。彼が来日したとき、ダリアンとノージ、二人であーだこーだABBAの武道館公演を見たときの話とかでとことん盛り上がったりしていたものですが。

なもんで。つい数時間前、11月5日深夜0時にサブスク音源が全曲解禁されたとほぼ同時にノージと一緒に聞きました。ABBA、40年ぶりの新作フル・アルバム『ヴォヤージ』。ノージも“あー、ABBAだなー”と泣いて喜んでました。

なんたって、5年越しの復活プロジェクトがようやく実現にこぎつけたわけで。

アグネタ、フリーダ、ビョルン、ベニー。1982年いっぱいでグループとしての活動を停止したABBAの4人は、その後もちょいちょい、節目節目に公の場で顔を揃えたりはしていたものの。でも、全員、再結成に関してはずっと消極的で。

その様子がちょっとだけ変わってきたのは、2016年。まずその年の1月、彼らの楽曲を使ったおなじみのヒット・ミュージカル『マンマ・ミーア!』にインスパイアされる形でストックホルムにオープンした体験型レストランに4人が揃って姿を現わして。同年6月、ビョルンとベニーが出会ってから50周年という節目を祝うパーティでも4人がまた勢揃い。アグネタとフリーダが「ザ・ウェイ・オールド・フレンズ・ドゥ」の生歌も披露したうえ、ステージ上に4人が並んだりして。

そんな流れを受け、人気番組『アメリカン・アイドル』などを手がける大物プロデューサー、サイモン・フラーが同年10月、ホログラムなどを駆使した“デジタル・エンタテインメント・エクスペリエンス”でABBAを復活させる計画を発表。つまり、生身の姿での再始動ではなく、全盛期である1970年代のお姿を基にしたアヴァターならぬ“ABBAター”として彼らを現代によみがえらせてヴァーチャル・ツアーに乗り出す、と。

でもって2018年、4人は35年以上ぶりに揃ってスタジオ入り。2曲の新曲を完成させたというニュースが伝わってきた。それらをフィーチャーした新作フル・アルバムの制作も予定され、併せて件のヴァーチャル・ツアーのスケジュールも…。と思っていたら、ほどなく新型コロナウイルスのパンデミックが。そのせいで計画がどんどん延期になって。

そのプロジェクトがこのほど、ようやく再開。まずは2022年5月にオープンする英国ロンドンのクイーン・エリザベス・オリンピック・パークのABBAアリーナで、10人編成のライヴ・バンドとともに、その“ABBAター”たちがパフォーマンスする革新的なデジタル・コンサート“ABBA Voyage”の開催が発表された。チケットは発売から最初の3日間で25万枚以上が売れたのだとか。

とともに、新たにレコーディングされた新曲2曲もリリースされた。「アイ・スティル・ハヴ・フェイス・イン・ユー」と「ドント・シャット・ミー・ダウン」。前者「アイ・スティル…」はぐっと落ち着いた感動バラード路線で。まあ、そうだよな、年齢も重ねたんだし、そっち方面でくるよな…と一瞬納得したりもしたのだけれど。

もうひとつの「ドント・シャット・ミー・ダウン」は、始まり方こそバラード調ながら、往年の「ダンシング・クイーン」みたいなピアノのグリッサンドを受けて途中からミディアムものへテンポアップして、いかにもABBAっぽいアグネタ&フリーダのダブル・ヴォーカルが心地よく舞って、ピアノの♪チャチャーン・チャチャーンって華麗なオクターブ・フレーズまで飛び出して、みたいな曲で。おー、やっぱABBA、いいね…とか思って。

続いて10月、さらなる先行トラック「ジャスト・ア・ノーション」も公開された。これがもう「恋のウォータールー」みたいなシャッフル・ナンバーで。おいしいテンション・ノート満載の美メロがサビで炸裂する、往年のABBAっぽいポップ・チューンだった。

あれ、でも、どこかで聞いたことあるぞ…と調べてみたら。これ、1994年のボックスセット『サンキュー・フォー・ザ・ミュージック』で世に出たボツ・テイクをつなぎ合わせた「ABBAアンディリーテッド」ってトラックにその断片が含まれていた曲で。もともとは1979年のアルバム『ヴーレ・ヴー』のために書かれたナンバー。当時のアグネタとフリーダのヴォーカルをそのまま流用しつつ、今回、ドラムとかギターとかバックトラックを一部新たに入れ直したものだった。そりゃ往年っぽくて当たり前なのだけれど。

それでも、やっぱりABBAの素晴らしさを思い出させてくれるごきげんな1曲には違いなく。なもんで、当初、実はそんなにこの再結成プロジェクトに対して盛り上がっていなかったぼくの気分も、なんだかぐんぐん高揚してきて。

で、ついに数時間前、11月5日の深夜0時、実に40年ぶりとなる新作スタジオ・アルバム『ヴォヤージ』の全曲が解禁されたのでありました。

先行3曲を含む全10曲ともビョルン&ベニー作。思った通り、基本は落ち着いたバラードっぽい方向性の1枚で。時期的なこともあるのか、クリスマス・ソングが入っていたり。アイリッシュっぽい曲があったり。ABBA流のポップ・カントリー・バラードがあったり。さすがダブル離婚カップルゆえか、子供との切実な別れを描いたマイナー調の曲があったり。気候変動を背景に自然の変化を綴る曲があったり…。けど、ビョルンとベニーが作った曲をアグネタとフリーダが声を合わせて歌うというのは、どんなタイプの曲であろうが、どんな時期の録音だろうが、もうそれだけでテッパンなのだな、と。なんだか胸が熱くなるのでありました。

まあ、ビデオクリップとか見ると、CGでクリエイトされたヴァーチャルなABBAが歌っていたりするわけで。この辺、素直に受け入れられるかどうかで評価も変わってきそうだけれど。とりあえずぼくは、このアルバムの音のほうだけ聞き込みつつ、40年という長い歳月の流れと、それを自分たちなりのやり方でナチュラルに超えてみせたABBAのポップな底力を噛みしめます。

なんか、日本盤は普通の10曲入りスタンダード・エディションの他、ベスト盤『ABBAゴールド』と抱き合わせセット、ライヴDVD『アバ・イン・ジャパン』とのセット、あるいはDVD『エッセンシャル・コレクション』とのセットという全4種類でのリリースだそうです。

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