Disc Review

Sling / Clairo (Republic Records)

スリング/クレイロ

今朝は、月曜日に取り上げたモーリー・バーチ同様、アルバムを出すたびに気になる女性シンガー・ソングライターのひとり…といっても、まだこれがフル・アルバムとしてはたったの2作目なんだけど。クレイロことクレア・コットリルの新作をご紹介。日々のウォーキングのときとか、BGMとしてぼんやり楽しませてもらっています。

フル・アルバムとしてはほぼ2年前に出た『イミュニティ』に続く1枚。待望のセカンド・アルバムだ。とはいえ、そんな2年のブランクの間にも、ムラ・マサことアレックス・クロッサンのアルバムへの客演があったり、以前ここでも取り上げたブルックリン拠点の女の子シンガー・ソングライター、“クロード”ことクローディア・ミンツと組んだ夢のユニット“シェリー”としてシングルをリリースしたり、いろいろやってはいた。

で、今回は、前作のロスタムに代わってジャック・アントノフがプロデュースを担当。最近、テイラー・スウィフト、ロード、ラナ・デル・レイ、セイント・ヴィンセントなど女の子アーティストと組んで実にいい仕事ぶりを見せているアントノフの手助けを受けながら、もうすぐ23歳になる、ちょびっと大人になったクレイロの今を届けてくれた。

自分が信じているものと反対の価値観に満ちた世界へと足を踏み入れていく…みたいな歌い出しでスタートするアルバムのオープニング・チューン「バンビ」から一気に引き込まれる。中期ビートルズのような、1960年代後半のビーチ・ボーイズのような、なんとも魅力的なベースラインや、深いコーラス・ハーモニーに心を持って行かれる。

キッチン・テーブルについた男女の光景、そんなときに感じた不快な思いを綴った先行シングル「ブラウス」もなんだかやばい。ロードのコーラス・ハーモニーを伴った、女の子版のサイモン&ガーファンクルみたいな静かなムードの曲なのだけれど。歌詞では“あなたが私のブラウスを見下ろしているとき私がどう感じているか伝えなきゃいけないの?/別に大声で言うほどのことじゃないけど/もし触らせれば話を聞いてくれるのなら私に触りなさいよ…”みたいなことを、消え入りそうな囁き声で、しかし毅然と歌っていて。

クレイロも彼女なりに外の世界と闘いながら日々を過ごしているのだな、と胸がふるえる。ロマンティックな思い、憤り、自己不信、郷愁…。様々な思いがイマジネイティヴに交錯する多面的な自画像という感じか。

そんなクレイロの思いを、1960年代サンシャイン・ポップ的だったり、バロック・ポップ的だったり、コズミック・カントリー的だったり、過去への眼差しをも絶妙に取り入れたヴァーチャルなサウンドで包んで。でも、結果、今の時代ならではのベッドルーム・ポップの世界を編み上げてみせる。このあたり、ジャック・アントノフのセンスが存分に発揮されているのかも。

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