Disc Review

Please Go Wild / Polite Company (self-released)

プリーズ・ゴー・ワイルド/ポライト・カンパニー

ニュージーランド出身、現在はロンドンを本拠に活躍するバブルガム・ポッパー、アラン・グレッグ。マトン・バーズの一員としておなじみかな。名曲「カム・アラウンド」を作った人。マトン・バーズを脱退後、2002年にロン・セクスミスらをゲストに迎えつつ“マシュマロウ”名義で実質的なソロ・アルバム『マシュマロウ』をリリースしたこともあったけれど。

その後、他アーティストのプロデュースとかサポートとかを続けつつ、はや20年以上。ついにアラン・グレッグがまた新たなプロジェクトを立ち上げました。それがポライト・カンパニー。

アルバムじゅうから、なんともポップで親しみやすくて、でも、ほんとこんな感じの音、最近まったく聞いていなかったなぁ…と思わせてくれるような曲が飛び出してきて。うれしくなった。

今回ノース・ロンドンのホーム・スタジオでアルバムをレコーディングしているとき、グレッグさんはよくギルバート・オサリヴァンやマイク・ネスミスのレコードを聞いていたそうで。アルバムの仮タイトルも『ザ・ギルバートウィーンズ』だったらしい。そういう良きころのシンガー・ソングライターたちがたたえていたメロディ感覚が充満する1枚です。

オープニングを飾る「サーキュレーション」は、コロナ禍の中、みんなが監禁状態から脱けだし始めたころよく耳にした“get back into circulation”、つまり“循環を取り戻す”というフレーズがテーマ。この曲で印象的に歌われる“I've been out of the loop too long”、つまり“長いことループから外れていた”というのは自身のアルバム・リリースが長らくなかったことを表わしているみたいで。むちゃくちゃライトでキャッチーな曲ながら、けっこうな決意が歌われているような気もする。

2曲目の「ノー・タイム・ライク・トゥモロウ」もいい。昔ここで選んだハッピーなシャッフルもののプレイリストに加えたい仕上がり。続く「パーフェクトリー・グッド・エクスプラネイション」はマリアッチふうのトランペットに導かれて始まる哀愁のマイナー調。情報過多の現在をシニカルに風刺するような内容だ。

で、「ベアフット・ビリオネア」。起業して成功を収めたIT長者みたいな男が、その後転落して自分が設立した会社を追われマンハッタンの路上で裸足で電話している写真を新聞のビジネス面で見たとかで、それにインスパイアされた曲だとか。

と、そんなふうに適度なメッセージ性も匂わせながら好感度たっぷりに進んでいく1枚。地味なリリースかもしれないけど、ようやく天気も安定してきた中、これまたウォーキングのおともに最適です。ただ、フィジカルは今のところバンドキャンプでしか見かけてませんが…。

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