レッツ・ゲット・ハッピー・トゥゲザー/マリア・マルダー・ウィズ・チューバ・スキニー
お恥ずかしいことに、チューバ・スキニーってバンド、去年ようやく知りました。ニューオーリンズを根城に活動するトラディショナル・ジャズ系ストリート・バンド。ごきげん。最高。コルネット、クラリネット、サックス、トロンボーン、チューバ、バンジョー、ギター、フィドル、アコーディオン、ハーモニカ、ウォッシュボード、大太鼓といったクセの強い楽器を9人のメンバー(+数名のサポート)がとっかえひっかえしながら、1920〜30年代のアーリー・ジャズの伝統を現代へと継承する見上げた連中で。
彼らを知ったきっかけは、以前ここで取り上げたサム・ドアーズのアルバム。これにチューバ・スキニーの面々が参加していたのでした。それで興味を持っていろいろ調べてみたら、結成は2009年。もう10年以上も前だった。YouTubeにもいろいろ街角での演奏風景や、各国のジャズ・フェスみたいなところに出演した際の映像が載せられていて。
それを次々見ながら思いきりハマって。バンドキャンプとかでこの人たちの過去アルバムを漁りまくり(けっこうたくさん出ていた!)。どうやら、音楽的な中心メンバーはコルネットを担当している女性、シェイ・コーンさんみたいで。この人、コルネットだけでなく、様々なニューオーリンズの音楽仲間のアルバムやコンサートでピアノを弾いたり、フィドルを弾いたり、ベースを弾いたり。実に多彩な活躍を見せている。
なんでもお母さんは日本の方だとか。で、おじいちゃんはあのアル・コーン! すごいっすね。そんなシェイさんを含むチューバ・スキニー。ぼくは遅ればせながら、すっかりファンになってしまったわけですが。
そんな“遅ればせ”ファンを思いきり喜ばせるコラボレーションが実現です。マリア・マルダーとのコラボ。完璧。なんでもマルダー姐さん、数年前、ウッドストックにある行きつけの洋服屋さんのBGMとしてチューバ・スキニーの音に出会ったのだとか。その洋服屋さんの店主の計らいで姐さん、彼らのアルバムを5枚ほどゲット。自身が60年代、ジム・クウェスキン・ジャグ・バンドなどで熱心に研究し演奏していたタイプのグッド・オールド・タイミーなジャズ、ブルース、ジャグ・バンド・ミュージックなどを今の時代に受け継ぐ若い世代がいることに大いに興奮。姐さん、仕事でニューオーリンズに出向いた際、彼らのライヴを見に行ったりしながら、やがて交流を持つようになったのだとか。
で、2020年1月、ニューオーリンズの音楽フェスに出演するにあたって、マリア・マルダーはチューバ・スキニーに共演を申し出て、短いセッションながら夢が実現。それきっかけに、ついにアルバム作りへと突入した、と。
結成以来、チューバ・スキニーのヴォーカルをつとめてきた女性シンガー、エリカ・ルイスさんが最近、自身の新バンド、ザ・ロンサム・ダヴズというのを作って別行動するようになったことも、彼らがマリア・マルダーの申し出を受け入れたひとつのきっかけだったのかも。まあ、エリカさんは完全に脱退したというわけではなく、今もチューバ・スキニーの面々とストリートで歌ったりしてはいるようだけど…。
ともあれ、そうした経緯を経て誕生したのが本作『レッツ・ゲット・ハッピー・トゥゲザー』だ。表題曲はルイ・アームストロングの2番目の奥さまだったリル・ハーディン・アームストロングが1938年に発表した自作曲のカヴァーだけれど、これをアルバム・タイトルにしたところにマリア・マルダーの高揚感が思いきり込められている感じ。
他の曲もすべて1920〜40年代の楽曲のカヴァーだ。テッド・ルイスやグーファス・ファイヴで知られる「アイ・ライク・ユー・ザ・ベスト・オヴ・オール」、フランキー“ハーフ・パイント”ジャクソンの「ビー・ユア・ナチュラル・セルフ」、デューク・エリントンの「デルタ・バウンド」、ザ・ハイ・ハッターズあるいはヴァレイダ・スノウなどでおなじみ「スウィング・ユー・シナーズ」、テンポ・キングの、というか、ビリー・ホリデイが歌ったテディ・ウィルソン楽団のパフォーマンスでおなじみの「ヒー・エイント・ガット・リズム」、ボズウェル・シスターズの「ガット・ザ・サウス・イン・マイ・ソウル」、ドロシー・ラムーアかミルドレッド・ベイリーか、どっちを意識しているのか…って感じの「アイ・ゴー・フォー・ザット」、再びヴァレイダ・スノウの「ペイシェンス・アンド・フォーティテュード」、再び“ハーフ・パイント”ジャクソンの「サム・スウィート・デイ」、ぼくも大大大好きなアネット・ハンショーの「ビッグ・シティ・ブルース」、ヴィクトリア・スパイヴィーの姉妹スウィート・ピー・スパイヴィーの「ロード・オヴ・ストーン」。
生で、それもストリートとかで見たいなぁ。アルバム・リリース・コンサートの映像もYouTubeに載っていて。すげえ楽しそう。下に載せておきますね。でも、こっちから行くことも来てもらうこともしばらくはできそうもないから、このCD聞きながらめいっぱい楽しむしかないっすね。
ただ、なんかオンラインCDストアとか見てみると、日本盤がふたつ、5月と6月、それぞれ別々のレーベルから出る旨、告知されていて。その辺、なんかテキトー(笑)。そのうちちゃんと整理されることになるのだろうけど、今のところ混乱しております。とりあえず、すでにリリースずみの輸入盤でゲットが吉か、と。