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Disc Review

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アメリカン・ビューティ:50周年記念デラックス・エディション/グレイトフル・デッド

やばいです。すごいの出ました。ジョニ・ミッチェルのレコード・デビュー前の音源119トラックを、ご本人の全面協力のもと、ライノ・レコードが発掘/編纂したCD5枚組ボックスセット『アーカイヴス Vol.1: アーリー・イヤーズ(1963-1967)』(Amazon / Tower)! 

1963年、19歳のときにラジオでナイロン弦のギターを奏でながら弾き語った静謐な「朝日のあたる家(House Of The Rising Sun)」や「ダーク・アズ・ア・ダンジョン」に始まる強力なレア音源集。未公開ホーム・デモ、ライヴ、ラジオ出演時の興味深いおしゃべりも含む音源など、ものすごいやつの雨アラレ。未発表のオリジナルもなんと29曲! ストリーミングでも昨夜というか今日の0時にドカッと公開されたのだけれど、なにせ全部聞くと6時間弱。ひと晩で聞ききれるはずもなく。詳しい紹介は後日ってことにしますが。

フィジカルにはキャメロン・クロウがジョニに直接取材した対話などを満載した充実のブックレットもついているので。11月になってから出る国内盤(Amazon / Tower)を入手するほうが得策かも。それまで、とりあえずストリーミングでじっくり音だけでも味わっておきたいものです。

というわけで、今日は別の大物を。

先日、事前の盛り上がりとしてストリーミング配信された未発表レア音源集『アメリカン・ビューティ:ジ・エンジェルズ・シェア』を紹介したけれど。その本チャン盤。グレイトフル・デッドが1970年にリリースした名盤『アメリカン・ビューティ』の50周年記念エディション。出ました。

1965年、奇才ジェリー・ガルシアを中心にサンフランシスコで結成されたデッドは、サイケでアシッドでラウドな長尺インプロヴィゼーションをフィーチャーしたサウンドで、当時の若い世代の間に自由と解放のシンボルとして流通し始めたドラッグ/トリップ体験をより効果的に彩るアイテムとして、まず人気を博したわけだけれど。

やがてメンバーの私生活面での混乱などを経て、より内省的な音作りをめざすようになって。1970年に2枚の傑作アルバムを作り上げた。それが『ワーキングマンズ・デッド』と『アメリカン・ビューティ』。メンバーのルーツであるカントリーやフォークに急接近したアコースティカルな仕上がりが話題を巻き起こした。

と、まあ、本国アメリカにおける実際のタイムラインで振り返るとそういうことになるわけだけれど。当時の日本では、どうだろう、よっぽど海外の事情に精通した人以外、グレイトフル・デッドとか、名前も知らなかったんじゃないかな。ぼくも知りませんでした。1960年代末だと、ビートルズ、ストーンズあたりのビッグなところを除くと、せいぜいクリーム、ツェッペリン、ドアーズ、キンクスくらいで。

のちのち思いきりハマっていくことになるデッドの初期傑作『太陽の賛歌(Anthem Of The Sun)』(1968年)とか、当時はまるっきりスルー状態。最初に耳にしたデッドのアルバムは、1970年の『ワーキング・マンズ・デッド』と『アメリカン・ビューティ』だった。それも数年遅れ。渋谷かどこかのロック喫茶でのことだった覚えがあるのだけれど。

そういう意味では、こっちのデッド・サウンドのほうが、ぼくにとって、というか、たぶんぼくと同世代の洋楽ファンにとっては基本になっているんじゃないだろうか。そういう意味でも抗えない名盤なのでした。カントリー・ロック・アーティストとしてのデッド。クロスビー、スティルス&ナッシュやポコなど、当時大活躍していた他の大物カントリー・ロック・アクトに比べると、コーラスもアンサンブルも思い切りゆるいのだけれど、このなんともドラッギーなゆるさがポイントだった。一度ハマると忘れられなくなる。これはこれで、間違いなくデッドならでは。

と、そんな1970年の傑作2作のうちのひとつ『アメリカン・ビューティ』。デヴィッド・グリスマンをはじめゲスト・ミュージシャンも交えながら作り上げられたこの名盤の最新リマスター盤に、1971年2月18日、ニューヨーク・ポートチェスターのキャピトル・シアターでレコーディングされた未発表ライヴ音源を16トラック・アナログ・マルチからミックスしたCD2枚を追加したのが今回のデラックス・エディションだ。

以前出た『ワーキング・マンズ・デッド』のデラックス版と同じ仕様。ただ、オリジナル・アルバムが出たのは『ワーキング…』のほうが先だけれど、デラックス版に収められたライヴ音源録音日は本『アメリカン・ビューティ』50周年盤に入っているやつのほうが3日だけ早い。やっぱこの2作は組にして味わわないといけないってことっすね。

ライヴでは「トラッキン」「シュガー・マグノリア」「キャンディマン」など『アメリカン・ビューティ』の収録曲ももちろん披露されているのだけれど、それよりもこの2月18日のキャピトル・シアターでのライヴは、「バーサ」「ルーザー」「グレイテスト・ストーリー・エヴァー・トールド」「ワーフ・ラット」「プレイング・イン・ザ・バンド」という5曲の新曲が初披露されたことでも知られているわけで。そっちについつい耳が行っちゃいます。

ちなみに、『ワーキング・マンズ・デッド』のとき同様、ピクチャー仕様のアナログLP(Amazon / Tower)も注文してあって。そちらのリリースは11月半ばに延びたというお知らせメールが来てた。うー、早く来ないかなー。まあ、来てもなんかもったいなくて針を落とせないんだけどね…(笑)。

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