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The fingerstyle funk bass master Rocco Prestia dies aged 69

追悼:ロッコ・プレスティア

ぼくが高校生とか、大学生とかだった、そんな時代。1970年代。ラリー・グレアムとか、ルイス・ジョンソンとか、そういうちょっと派手めなスター・ベーシストたちが、当時まだ珍しかったスラップ(当時は誰もが“チョッパー”と呼んでましたが…)という、右手親指でバチバチ弦をはじく強烈なスタイルで一躍人気を博すようになって。

なもんで、なんとなくファンク音楽のベースってそういうものなのかなと短絡的に思い込みがちだったり。

そんな時代に、いやいや、そうじゃねーよ、と。本当にファンキーなベースってのはこういうものなんだよ、と。右手の人差し指と中指の2本での真っ当な指弾きを基本に、天才的なフレージングと、ソリッドな16ビートのグルーヴと、鋭いシンコペーション感覚と、左手の絶妙なミュート・テクニックなどを全開にしたプレイで、じわじわとぼくたちをとりこにしていったベース・プレイヤー。それがロッコだった。

フランシス・ロッコ・プレスティア。ご存じ、タワー・オブ・パワーのオリジナル・ベーシスト。一時期脱退したこともあった。メンバーとして復帰後、重度の肝臓病のためにバンドへの参加を断念せざるを得なかった時期もあった。が、ファンも含めた周囲の厚いサポートを受けながら回復。1970年、タワー・オブ・パワーのレコード・デビュー以降、半世紀にわたって世界一のファンク・グルーヴをぼくたちに届け続けてくれた。

そんなロッコが9月29日、ラスヴェガスのホスピスで亡くなった。享年69。

その昔、ワーナー・パイオニア・レコードが日本に誕生したばかりのころ、確か1973年だったと思うけれど、そこに所属するワーナー/リプリーズ/アトランティック系の洋楽アーティストを日本でお披露目するため、アナログLP2枚に1アーティスト1曲ずつ盛りだくさんに詰め込んで980円という廉価でリリースされた『ホット・メニュー』という徳用サンプラー・アルバムがあった。このアルバムで初めて聞いて、思いきりハマったアーティストは、たとえばJ.ガイルズ・バンドとかヴァン・モリソンとかゴードン・ライトフットとか、本当に多かった。

で、そのうちのひとつがタワー・オブ・パワー。1972年リリースのアルバム『バンプ・シティ』から「ダウン・トゥ・ザ・ナイトクラブ」が入っていて。そのホーン・セクションの切れ味と、強烈なリズム・セクションの16ビート・グルーヴにぶっとんだ。以来、彼らのアルバムを買い漁るようになって。この強烈なリズム・セクションのドラムがデヴィッド・ガリバルディという人で、ベースがロッコ・プレスティアって人だということを知った。

おなじみ「ホワット・イズ・ヒップ」を聞いたときのショックも忘れない。忘れられない。ホーン・セクションも含めた全員一丸となって16分音符を食ってガシガシきめるシンコペーションとか、ふと油断すると、もうどこが小節アタマなんだかわからなくなっちゃうくらいのキレの良さで。

何よりロッコのベース。“ももももももももっ”と同じ音を16ビートでぐいぐい繰り出し続けたかと思うと、突如、ダイナミックなランに突入して。その瞬間のとてつもなくスリリングな感触とか、もうたまらなかった。かけがえのないベーシストだった。

今年の3月、タワー・オブ・パワーの新作が出たときにも書いたことだけれど。ぼくは2017年の春、自分の不摂生というか、健康への無自覚というか、そういったこともあって身体をこわし緊急入院。まじ、ちょっと死にかけて。でも、なんとか運良く回復できて。リハビリもがんばって。で、退院後、初めて見に行ったライヴがタワー・オブ・パワーだった。まだ本調子ではなかったものの、こればかりはどうしても見逃したくなくて。

でも、あのコンサート、行ってよかった。例年通りっちゃ例年通りだったのだけれど。それがまたうれしかった。エミリオ・カスティーヨやドク・クプカら創設以来の中核ホーン・プレイヤーたちも相変わらず健在。ばりばりだった。ベースは2015年、2016年に引き続き、ロッコ。残念ながらドラムはガリバルディではなく、前年久々に復活した鉄壁のコンビネーション再び…というわけにはいかなかったものの、でも、ロッコのぶくぶくベースをまた存分に堪能できて本当に幸せだった。

不摂生で身体こわしてる場合じゃないな、と思った。高校時代とか大学時代に心から憧れて聞きまくっていた年上のアーティストたちが元気にライヴやっていてくれる間は、俺も負けずに元気でいて、最後まで聞き続けなきゃいかん、と。闘病を乗り越えてごきげんにファンキーなグルーヴを放ち続けてくれているロッコのパフォーマンスを生で浴びながら、思いを新たにしたものです。そういう意味でも恩人でした。

タワー・オブ・パワーでロッコがプレイしたすべての曲が宝物だけれど。その中から、今日この瞬間の気分で、彼の名演のうちほんのひとにぎり、15曲を並べた追悼プレイリストを作ってみました。もしよければ聞いて、ともにこのワン・アンド・オンリーな名手の逝去を悼みましょう。

どうぞ安らかに…。

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