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Disc Review

The Neon Skyline / Andy Shauf (ANTI-)

ザ・ネオン・スカイライン/アンディ・シャウフ

以前、先行トラックがリリースされたときにも軽く騒がせてもらったアルバム。カナダのインディ・フォーク/インディ・ポップ系シンガー・ソングライター、アンディ・シャウフの新作『ザ・ネオン・スカイライン』が出た。

2016年に発表されて静かに話題となった『ザ・パーティ』同様、全体でひとつの物語を追うコンセプト・アルバムで。ただ、『ザ・パーティ』のほうは文字通りパーティに集まった人々それぞれの物語を折り重ねたものだったのに対し、こちらは“ネオン・スカイライン”という名前のバーで友人たちと過ごす一夜の物語。主人公はひとりだ。友人や馴染みのバーテンダーと様々な会話を交わす中、かつて苦い失恋をした元カノが街に戻ってきていることを知り、さらにはその元カノも姿を現わし、心は千々に乱れ…。

味わい深い短編小説を読んでいるような気分にさせてくれる1枚だ。音のほうも基本的にシャウフひとりですべての楽器を演奏。シンプルながらタイムレスというか。実にセンスのいい音世界を編み上げている。『ザ・パーティ』を出したあと、2018年には地元の仲間と組んだバンド、フォックスウォーレンとしてのアルバムもリリースしているけれど。ソロ名義では、やはりバンドとは違う、よりパーソナルな手触りを模索しているということか。

サルーン・ソングと呼ばれる音楽があって。サルーン・ソング=酒場の歌。その種の曲をもっとも得意としていたフランク・シナトラの代表曲のタイトルを借りれば“ウィー・スモール・アワーズ・オヴ・ザ・モーニング”、つまり明け方近い深夜に、酒場のジュークボックスで、あるいはやさぐれたピアノ弾きの演奏で悲しい歌を聞きながら、バーテンダー(実在しない、架空のバーテンダーでもいい)相手に忘れられぬ恋の話をする男のやりきれなさを綴ったタイプの曲のこと。

そのシンガー・ソングライター版、みたいな感じかも。シナトラとはまた違った形での、さりげなく、ユーモアを伴った、カジュアルなストーリーテラーぶりが存分に楽しめる。過去への未練とか、後悔とか、そういうものは誰にでもあって。甘かったり、苦かったり、いろいろな思いも交錯するけれど。でも、日々は続いていく。ライフ・ゴーズ・オン。常に何かが終わり、何かが始まって。知らず知らずのうちに自分も変わる。友人も、もちろん元カノだって変わっていく。

けっして感傷的になりすぎることのない、内省的なアプローチにぐっときます。

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© 2020 Kenta Hagiwara