Disc Review

Uncle Walt's Band / Uncle Walt's Band (Omnivore Recordings)

UWB

アンクル・ウォルツ・バンド/アンクル・ウォルツ・バンド

往年のダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックス、アスリープ・アット・ザ・ホイール、MFQ、わりと近年のアサイラム・ストリート・スパンカーズ、スクォーレル・ナット・ジッパーズ、ホット・クラブ・オヴ・カウタウンなど、ノスタルジックな味をたっぷりたたえたストリング・バンド系のグループが、ぼくは学生時代から大好きで。

普通だったらジャズ・コンボ的な編成のバンドでバックアップするような、古き良きグレイト・アメリカン・ソングブック系の音楽を、カントリー〜ブルーグラス的な楽器で聞かせる連中。まあ、そこにはジャンゴ・ラインハルト=ステファン・グラッペリという、ギター+ヴァイオリンによる黄金のアンサンブルからの影響が色濃く反映されているわけだけれど。

アーシーな土の香りとアーバンな洗練との共存というか。その辺がなんとも魅力的。そのテのグループの音盤をいろいろアサりまくったものだ。で、そんな中で出会ったバンドのひとつが、今日取り上げるアンクル・ウォルツ・バンド。ウォルター・ハイアット、チャンプ・フッド、デヴィッド・ボールという3人の学生仲間が1969年、サウス・キャロライナ州スパルタンバーグで結成したトリオで。アコースティック・ギター2本+ウッドベースという編成のシンプルな演奏をバックにちょっぴりジャジーな3声ハーモニーを聞かせるやつらだ。最高だ。

1972年、ナッシュヴィルに本拠を移転。そこでテキサス・カントリー系シンガー・ソングライター、ウィリー・アラン・ラムジーの目にとまった。ラムジーのすすめもあって、さらに本拠地をテキサス州オースティンへと移し、活発にライヴ活動。そんな中で徐々に知名度を上げ、やがて1974年、出身地に近いノース・キャロライナ州シャーロットのアーサー・スミス・スタジオへと出向き、ついにデビュー・アルバム『ブレイム・イット・オン・ザ・ボサノヴァ』を制作した。

ところが、アルバムを作り上げたところである種の達成感を得てしまったのか、単に仲違いしちゃっただけなのか、事情はわからないけれど、アルバム・リリース直後にバンドは解散。しばらく3人それぞれの活動を続けていた。が、アルバムのほうはオースティン周辺のファンの間で熱烈に受け止められた。けっして一般的なセールスに結びついたわけではないものの、一部のマニアックな要望に応える形で、メンバー3人は再びオースティンへ。バンドを再結成して活動を再開した。

とともに、デビュー・アルバムの収録曲の曲順をがらりと変えて、ずばり『アンクル・ウォルツ・バンド』というタイトルで再発。その1978年の再発盤のほうが、なんとこのほどCD、アナログLP、およびストリーミングでよみがえった。実は去年、突如、彼らの曲折に満ちたキャリアをまとめたアンソロジーCDが編まれて。あのときも異常にびっくりしたものだけれど。その流れを受けた今回のファースト再発もとんでもない驚きだ。しかも、ボーナス・トラックとしてデモ・ヴァージョンが11曲入り! デモとはいえ、この人たちの場合、完成ヴァージョンもほぼ一発録りのアコースティックものだから、本チャンと変わりなし。うれしいじゃないですか。

ジャンゴ・ラインハルト、レイ・チャールズ、デルタ・リズム・ボーイズ、ドク・ワトソンらのレパートリーのカヴァーとオリジナル曲が無理なく混在。ライル・ラヴェットやジミー・デイル・ギルモア、ルシンダ・ウィリアムズなどもアンクル・ウォルツ・バンドのファンなんだとか。あったり前だよね。ごきげんにかっこいいんだから。

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