bless You!/オリジナル・ラブ
オリジナル・ラヴ=田島貴男って人は、今さらぼくごときが言うまでもないことだろうけれど、やはり日本の宝だと思う。
そんな彼の4年ぶりのオリジナル・アルバム。近年、精力的に開催している“Love Jam”も、“ひとりソウルショー”も、怠惰なぼくはまったく体験したことがないのだけれど。能地祐子がちょいちょい仲良く一緒に仕事させていただいているようで、我が家ではよく彼の歌声が流れている。で、それを耳にするたびに思うのだ。なんというか、こう、動物的/直感的な躍動みたいなものと、クールで理性的な眼差しみたいなものとが田島貴男の歌声には本当に無理なく共存していて。この天然のバランスが唯一無比だな、ずば抜けているな、たまらないな、と。
木暮晋也、真城めぐみ、村田シゲ、冨田謙を核に、渡辺香津美、長岡亮介、岡安芳明、PUNPEE、角銅真実ら多彩な顔ぶれが客演。ダンス・ミュージックとしてのソウル、あるいはヒップホップ、そんなソウル・ミュージックを愛でる眼差しでアプローチするジャズ、ジャジーでスウィートなハーモニー感覚を活かしたポップス、そしてゴスペル、ポップでキャッチーなギター・リフを伴ったロックンロール、みたいな。様々な音楽性が脈絡なく渦巻くのではなく、ある一定の道筋のもとで有機的に同居する感触がかっこいい。
もちろん、そんな中にも、たとえばファンキーなビートの中にパッキパキのテレキャス・サウンドが聞こえてきたり、近年のヒップホップ的な過激なリズム解釈と往年の洒落たコード進行とポップなメロディが同居していたり、うれしい異化効果も。加えて、繰り返しになるけれど、リフ作りのうまさのようなものも随所に感じられて。この人、強力なヴォーカリストであり、優れたソングライターであり、それと同時にやっぱり歌心あふれるギタリストなんだな、ということも改めて思い知る。
伝統への熱いまなざしと、しかし、フォーマットに縛られることを拒絶する反骨心と。歌詞も含めて、それら相反する思いが愛おしく火花を散らす1枚です。