Disc Review

Manchester: A City United In Music / Various Artists (Ace)

Manchester

マンチェスター、音楽に育てられた街〜イワン・マッコールからオアシスまで/ジョージー・フェイム、10CC、ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ他

ミュージック・シティ。音楽都市。そう呼ばれる都市が世界にはたくさんあって。

いちばん多いのがやっぱりアメリカか。魅力的な音楽都市だらけ。メンフィス、ナッシュヴィル、ニューオーリンズなどのように、古くから独自の音楽スタイルを生み出してきた土壌もあれば、ナッシュヴィルを離れたウィリー・ネルソンが新たな拠点としたのをきっかけに、70年代半ば以降、全米の音楽的潮流と別の文脈で独自のシーンを形作るようになったオースティンとか、ボブ・ディランが60年代に居を構えたころから音楽家が次々集まるようになったウッドストックのような新興音楽都市もある。他にも、ニューヨークとかシカゴとかサンフランシスコとかロサンゼルスとかミネアポリスとかシアトルとか、もうキリがない。

日本だとどうかな。渋谷系とか言われていたころの渋谷とか、めんたいロックの博多とか、めんたんぴんとか出てきたころの金沢とか、加山雄三からブレッド&バター、桑田佳祐、河西洋介などを生んだ茅ヶ崎とか、都市ではなくてもうちょっと広く“県”みたいになっちゃうけど、沖縄とか、それなりに一定のムーヴメントに結実した土地柄みたいなものは確かにある。ヨーロッパに目をやっても、ウィーンとか、ベルリンとか、パリとか、ローマとか、ストックホルムとか…。

でもって、イングランド方面。ここにもいろいろ。ロンドン、リヴァプール、ブリストル、カーディフ、ウェイクフィールド、グラスゴー、エディンバラ、ペイズリー、ダブリン、ベルファスト…。そのうちのひとつ、ロンドンに次ぐイギリス第二の音楽都市と言われるマンチェスターが生んだ新旧アーティストたちの音源を英エイス・レコードがぐわっとCD2枚組に詰め込んで編纂したのが本コンピレーションだ。日本国内仕様盤も出ていて、そちらの邦題は『マンチェスター、音楽に育てられた街〜イワン・マッコールからオアシスまで』。

ホリーズ、ジョン・メイオール、ウェイン・フォンタナ、エルキー・ブルックス、ジョージー・フェイム、ハーマンズ・ハーミッツ、ダコタス、バークレイ・ジェイムス・ハーヴェスト、10CC、バズコックス、マガジン、ジョイ・デヴィジョン、ニュー・オーダー、シンプリー・レッド、ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズなど、往年のフォークものから、60年代ブリティッシュ・ビートもの、70年代ストロベリー・スタジオ系、ノーザン・パンク、80年代マンチェ系まで、55年に及ぶ期間から選ばれた名曲名演が全45曲。

音楽的に一定の傾向なり伝統なりがあるのか、ないのか、かなりサウンド的には多彩なので微妙ではあるけれど。新しい音楽家たちが育ちやすい環境というか、音楽の表情を決定づける土地柄というのはやはり大切なのだなと改めて思う。44ページの詳細ブックレットも、その辺の謎を解き明かすための助けになりそうです。英エイスはストリーミングやってないのが残念だけど…。

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