Disc Review

Hard Candy / Counting Crows (Geffen)

ハード・キャンディ/カウンティング・クロウズ

すでにネット上では話題になっているようだけれど。

タワー・オヴ・パワーの炎のぶくぶくベーシスト、ロッコが大変なことになっているそうだ。メールで知らせてくださった野口さん、松下さん、ありがとう。ロッコは病に冒されていて、肝臓移植が必要という深刻な状態におかれているらしい。詳しくは――

http://www.roccoprestia.jp/

で、チェックしてください。ぼくは一時期、わりと本格的にベースを弾いていた時期があって。そのころ、とにかくコピーしまくったのがロッコだった。彼の繰り出すファンキーな16ビート・ベースは本当にすごい。「ホワット・イズ・ヒップ」とかで、えんえん“もももももももも……”と刻み続ける、あのベース・ラインには心底やられた。世界最強のベーシストだと、ぼくは今でも確信している。

このホームページを始めたのが95年のことだから、以降タワー・オヴ・パワーに関してはあまりたくさんの新譜レヴューをしてはいない。これとか、これくらい。だけど、エルヴィス・プレスリー、ビーチ・ボーイズ、ジェームス・テイラーらと並んで、ぼくの音楽体験をより広げ、より深めてくれたのがタワー・オヴ・パワーだった。彼らがいなければファンクとかR&Bとかを、ぼくは今のように深く楽しむことはできなかったんじゃないかと思う。

ぼくと同じように感じていらっしゃる日本の音楽ファンも少なくないはず。そんなタワー・オヴ・パワーが、あの独特の、屈強の、唯一無比のグルーヴを今後も繰り出し続けるために、ロッコは絶対になくてはならない存在だ。彼を助けるために、何かぼくなりにできることをしていきたいと思う。同じような気持ちを抱いている方は、ぜひ先述したロッコ基金のホームページを訪ねて、最新情報をチェックしてほしいと思います。

そういや、われらがマイク・ラヴも背中の持病の手術のために来日中止だ。さすが、ロック・ミュージック自体が誕生してから半世紀以上たって。多くの素晴らしいミュージシャンたちの身体にもガタが来はじめている。訃報もやたら多いし……。聞いてるこっちもそろそろ“老体”に近くなってきているし(笑)。レコード会社をはじめとする音楽業界もCDにコピーガードをかけるなんて大バカな暴挙に出なきゃならないくらい、大衆音楽の本質を見失っているし。シーン全体が動脈硬化っつーか。ロック音楽そのものが危機にさらされている時期なのかもなぁ。

と、つい弱気になりがちな昨今ですが。そんな中で一筋の希望の光を感じさせてくれたのが今回のピック・アルバム。カウンティング・クロウズの新作だ。前作『ジス・デザート・ライフ』のリリースが1999年暮れ。素晴らしい内容のアルバムだったものの、全世界で850万枚を売り上げた93年のデビュー作『オーガスト・アンド・エヴリシング・アフター』や、全米アルバム・チャート初登場1位に輝いた96年の『リカヴァリング・ザ・サテライツ』あたりと比べると評価も地味めで。ああ、この人たち、もしかしたら90年代のバンドとして世紀を超えずに埋もれちゃうのかも……と心配していたのだけれど。すんません。取り越し苦労でした。世紀を超えて放たれたスタジオ盤第4弾。素晴らしい仕上がりです。ハード・ロックでもなく、パンクでもない、ルーツに深く根ざした正真正銘、豊潤なアメリカン・ロックを、彼らカウンティング・クロウズが見事に21世紀へと受け継いでくれた。最高だ。

なんでも数年前、中心メンバーのアダム・デュリッツがロックンロール・ホール・オヴ・フェイムのイベントでポール・マッカートニーと話をする機会があったとかで。その会話から、よりメロディに集中しようという気持ちが生まれたらしい。成果はあった。豊かな情景描写に貫かれた歌詞の深さはそのまま、さらに独自の叙情的なメロディ感覚に磨きがかかって。鉄壁じゃないか。ライアン・アダムスやルーファス・ウェインライトとの仕事で知られるイーサン・ジョンと、ご存じスティーヴ・リリーホワイトがプロデュース。シェリル・クロウ、マシュー・スウィート、ライアン・アダムスらが客演。名盤の誕生に花を添えている。

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