
トライアンフ&サッドネス/エラ・トンプソン
オーストラリアにはオーストラリアのソウル/ファンク/ジャズ・シーンみたいなものがあって。故ルネー・ゲイヤーとか、本ブログでもちょいちょい取り上げるテスキー・ブラザーズとか、バンブーズとか、サプライズ・シェフとか、カラテ・ブーガルーとか、いろいろな名前が脳裏をよぎるけど。
その辺の人脈とも絡みつつ活躍するシンガー・ソングライター、エラ・トンプソンの新作、出ました。この人、16歳のころ、大先輩であるルネー・ゲイヤーの目にとまってツアーに同行したこともあるみたいだし、テスキー・ブラザーズがバックアップしていた時期があったり、バンブーズとコラボしたり…。その他にもエレクトロ・ポップ・デュオのGL、インディー・バンドのドーサル・フィンズなどで活動するなど、さまざまな音楽ジャンルを渡り歩いてきて。
2023年にEP『ドミノ』、2024年にアルバム『リップル・オン・ザ・ウィング』をリリース。で、今回の新作『トライアンフ&サッドネス』。ここでより一層1960〜70年代のクラシック・ソウルに接近した感じか。
彼女のソウル愛を支えているのは、メルボルンを拠点とする腕利きミュージシャンたち。共同ソングライター兼プロデューサーは、テンポラリー・ブレッシングスなどで活動するリアム・マッゴリー。ドラムスにはカラテ・ブーガルーのハドソン・ウィットロック。ギターのラクラン・スタッキー、キーボードのジェスロ・カーティンらサプライズ・シェフ周辺の面々も参加している。
ミックスはダップトーン・レコードでの仕事でも知られるウェイン・ゴードンをオンラインで起用。で、イギリスの名門、Mr Bongoからのリリース。いい布陣じゃないですか。
メルボルンから少し離れたヴィクトリア州の田園地帯にあるスタジオにバンドのメンバーたちとともに集まって、わずか4日間で15曲分のベーシック・トラックをアナログ・レコーディング。その後、ホーン・セクションやパーカッションなどのダビングが行われて、そこから厳選された10曲がアルバムに収められた。
エラさんが影響を受けたアーティストとしてビリー・ホリデイやニーナ・シモンとともに名前を挙げているのがカーティス・メイフィールドで。そのあたりの色合いをぐっと強めに発揮した1枚という感じ。スウィート・ソウルとノーザン・ソウルの要素が渦巻くサウンドに乗せて、持ち前の洗練されたメロディックな叙情性と即興性を披露しつつ、絆、愛、憧れ、そして心の弱さについて、感情的に成熟した解釈を届けてくれる。
曲によってはいきなりコズミックでサイケなファンクっぽい要素が顔をのぞかせたり、かと思うと、テディ・ランダッツォが手がけたロイヤレッツからの影響を表明したスウィートなガール・グループふうの感触があったり。
勝利と悲しみ…というアルバム・タイトルもなんだか味わい深いっすね。

