Disc Review

Motif / HalfNoise (Congrats Records)

モティーフ/ハーフノイズ

パラモアのドラマー、ザック・ファロが2010年、バンド脱退後にスタートさせた、なんともひねくれ気味な愛すべきソロ・ユニット“ハーフノイズ”。パラモア脱退中だけのプロジェクトかと思っていたら、2017年にバンド復帰を果たした後もこの名義でEPを出したり、アルバムを出したり、パラモアのヘイリーがライヴやアルバムに参加したり…。どうやら、こっちもなくならないようで。よかったよかった。

と、そんなハーフノイズの最新アルバム、出ました。フル・アルバムとしては4作目かな。ハーフノイズでのザックはこれまでも往年のロック/ポップ感覚みたいなやつを楽しげに見え隠れさせるのが得意ワザだったのだけれど、今回はそうした持ち味を過去イチまっすぐに、強く、ギミックなしに表出してみせた感じ。前作、2019年の『ナチュラル・ディスガイズ』でのサイケ・ガレージっぽい味からさらに深みに足を踏み込み、ユニークなレトロ・ポップ・ワールドを構築している。

ちょっと前にザックがプロデュースした“エルキー(Elke)”ことケイラ・グラニンジャーのファースト・アルバム『ノー・ペイン・ヒア・フォー・アス』に漂っていた“屈折したキャッチーさ”みたいな感触は、もちろんこちらでも炸裂。ケイラとザックは2019年ごろから付き合っていて、一緒にツアーしたりもしているみたいで、そんなロマンスにインスパイアされた1枚っぽい。

1970年代ニュー・ソウルを想起させる三連ものがあったり、ブルー・アイド・ソウルっぽいダンス・チューンがあったり、1960年代後半サンシャイン・ポップふうのマイナー・シャッフルものがあったり、トッド・ラングレンみたいなブルー・アイド・ソウルがあったり、ジョン・レノンっぽいスリー・フィンガー曲があったり、ピンク・フロイドみたいな浮遊感に満ちたミディアムものがあったり、思いきりおセンチなボサノヴァがあったり、ジョージ・ハリスン〜ジェフ・リン的な泣きのスライド・ギターが印象的な曲があったり… 。

パラモアに復帰したことで、あっちのポップさとはまたひと味違う、より趣味性の高いポップ・テイストをこっち限定で全開にできるようになった、みたいな? 二足のわらじがいい方向に機能した好例かも。今のところデジタル・リリースのみ。ストリーミングか、ダウンロード販売。フィジカルCDは見かけてません。だんだんそういうのが増えてきた。12月になるとヴァイナルが出るみたい。

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