
キャプテン・ファンタスティック(50周年記念エディション)/エルトン・ジョン
思いきり個人的な話ですが。エルトン・ジョンにいちばんハマっていたのは高校生のころ。
初来日公演を体験したあと、『マッドマン(Madman Across the Water)』から『ホンキー・キャット』、『ピアニストを撃つな!(Don't Shoot Me I'm Only the Piano Player)』、『黄昏のレンガ路(Goodbye Yellow Brick Road)』あたりに連続でどっぷりいって。
大学生になって初めて出たのが、次の『カリブ』。このアルバムには、まあ、ヒットした「僕の瞳に小さな太陽(Don't Let the Sun Go Down on Me)」とか入っていたこともあって、わりとフツーに接していて。
で、1975年。これですよ。『キャプテン・ファンタスティック(Captain Fantastic & the Brown Dirt Cowboy)』。これはよく聞いたなー。傑作だ! と思いきり盛り上がったっけ。
エルトンが“キャプテン・ファンタスティック”。ソングライティング・パートナーであるバーニー・トーピンが“ブラウン・ダート・カウボーイ”。二人の出会いからデビュー前後までの物語を、比喩と回想を交えながらコンセプチュアルに綴った1枚で。
当時、日本ではよりおセンチな『…イエロー・ブリック・ロード』のほうが傑作として語られることが多かった覚えがある。以前ここにも書いた通り、ぼくがエルトンの曲の中でいちばん好きな「スウィート・ペインテッド・レディ」が入っているってこともあって、『…イエロー・ブリック・ロード』はぼく個人にとってももちろん思い入れの強い2枚組ではあるのだけれど。楽曲の完成度的も、アルバム全体のトータル色も、こちらのほうが上だと思う。米ビルボード紙のアルバム・チャート初登場1位という快挙を史上初めて成し遂げた1枚でもあって。
そんなセールス面も含め、1970年代に快進撃を続けていたエルトン・ジョンの絶頂の記録って感じがした。実際はかなり精神的に追い詰められている時期の作品だったようで。そのあたりを反映した、超誤訳邦題としておなじみ「僕を救ったプリマドンナ(Someone Saved My Life Tonight)」とかもあったけれど。
でも、そんなことも含め、エルトンとバーニー、二人で共作しているとはいえ、ものすごくパーソナルな、ひとりのシンガー・ソングライターが書いているような感触がよくて。音は相変わらずポップな作りになってはいるものの、いい形でストーリーテラーとしてのエルトン・ジョンの姿が記録された仕上がり。
と、そんなアルバムの50周年記念エディション。まあ、売れたアルバムなのですでに過去、拡張エディションがリリースされていて。特に10年前、40周年のタイミングで出たデラックス・エディションには当時ウェンブリー・スタジアムで行われたアルバム全曲完全再現ライヴとかも収められていて。盛り上がったものですが。
今回は50周年。追加ディスクの内容が変わって。CD1は同じくオリジナル・アルバムの最新リマスターに、CD再発時に追加されたアルバム未収録シングル音源など。で、CD2がセッション・デモ、及び2005年の30周年記念ライヴ音源。本作の中で、地味ながら、個人的にはとっても好きな「ライティング(歓びの歌をつくる時)」のデモとか、なんかうれしかったです。
エルトン本人の日記からの未公開記録なども含む28ページ・ブックレットや、オリジナルLP発売時に付いていたスクラップ・ブックの新編集版などが入ってます。

