
プリーチャー・キッズ/ロバート・ランドルフ
本ブログではだいぶ前に『ブライター・デイズ』ってアルバムを紹介したことがあるロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド。
米国のペンテコステ派教会を中心に育まれたユニークな音楽文化“セイクレッド・スティール”の担い手として知られるランドルフが近親者を集めて結成したごきげんなバンドで。過去、ライヴ盤も含めて8作のアルバムを出しているのだけれど。
中心メンバーであるロバート・ランドルフはバンド活動以外にも、ダーティ・ダズン・ブラス・バンド、ロス・ロボス、デイヴ・マシューズ・バンド、バディ・ガイ、リンゴ・スター、オジー・オズボーン、エルトン・ジョン&レオン・ラッセルなど幅広いアーティストのアルバムに客演したりしていて。
そんなランドルフが、ついにバンド名義ではなく、ソロ名義で放った初めてのアルバムが本作『プリーチャー・キッズ』だ。ウェイロン・ジェニングスの息子で、自らアーティストとして活動すると同時に、ブランディ・カーライルやタニヤ・タッカー、マリリン・マンソンらのプロデュースなども手がけるシューター・ジェニングスがプロデュース。リリースはかのサン・レコードから。
レコーディングはロサンゼルスのサンセット・サウンド・スタジオと、ナッシュヴィルにあるザック・ブラウンのサザン・グラウンド・スタジオで。セッションの間、テープを回しっぱなしにしてジャムりながら曲を作って、面白い部分をどんどんピックアップして完成させた1枚らしい。
客演勢の中では、ジュディス・ヒルが強力。3曲を共作し、ごきげんにブルージーなヴォーカルも聞かせてくれている。その他、アーロン・レイティアーやJ.T.ネロ、サム・ホランダーらとの共作曲も。1曲だけカヴァーがあって。それがJ.J.ケイルの「アイド・ライク・トゥ・ラヴ・ユー・ベイビー」っていうのも渋い。かっこいい。
アルバム・タイトルからもわかる通り、全体に流れるコンセプトは、ランドルフ自身もそうであるらしい“牧師の子供たち”として育った者たちに共通の体験だとか。本人のコメントによれば、「ゴスペルに根差し、教会からロックやブルースのステージへの旅によって形作られた私たちの共同の日記」とのこと。
何をも怖れず、子供たちを育て、ともに祈り、踊ることで自分たちの居場所を確保してきた自立した女性たちへの賛歌のようなファンキー・チューンもあれば、教会で牧師から正しく生きなければ地獄行きだと教わって育ちながらも、果たしてそれだけが真実なのか、目をさますべきだ、伝統を破ることはなかなか理解されない、みんな魔女になるのが怖いだけ、誰もひとりで罪を冒すわけじゃない、俺を罪人と呼んでもかまわない…とメッセージするブルース・ロックあり。清濁、正邪、聖俗入り乱れるやばい音世界です。
国内盤も出て、ライナー書かせていただきました。光栄です!