Disc Review

Bird Hour / 7ebra (PNKSLM Recordings)

バード・アワー/7ebra

近ごろ各所でけっこう話題になっているスウェーデンの双子姉妹ユニット、7ebra。これ、“7”を“Z”に見立てて“ゼブラ”あるいは“ジーブラ”と読むのか、そのままずばり“セヴネブラ”とか読むのか、いまだよくわかりませんが。まあ、たぶんゼブラあるいはジーブラでいいのかな。現状、確証がないのでそのまま欧文表記にしておきますが(笑)。

去年リリースしたデビュー・シングル音源がApple Musicとかでけっこう注目されていて。SXSWに出演したりもしていて。どんな子たちなのかと思ってちょこっとクレジットを調べてみたら。プロデュースがあのトーレ・ヨハンソンで。むくむくっと興味が湧き上がってきたのでした。

トーレ・ヨハンソンには一度だけお目にかかったことがある。1996年のことだ。ぼくが司会していた音楽番組にゲストとしてやってきていろいろ話を聞かせてくれた。懐かしい。カーディガンズを生んだことでもおなじみ、スウェーデンのマルメという小さな街にあるタンバリン・スタジオのオーナーでもあり、優れたプロデューサーでもあり。

ご存じの通り、そのカーディガンズをはじめ、エッグストーン、レディ・リネット、クラウドベリー・ジャム、トランポリンズらスウェーデンのアーティストのみならず、フランツ・フェルディナンド、ニュー・オーダー、セイント・エティエンヌ、トム・ジョーンズら英国系や、ボニー・ピンク、原田知世、カジヒデキら日本勢にまで、独特の洗練と郷愁をたたえたポップ・サウンドを提供してきた名匠だ。

ノージくんもかつてトランポリンズの取材でタンバリン・スタジオを訪れたことがあって。帰国後、トーレさんのことも含めて、いろいろ興味深い話を聞かせてくれたっけ。良くも悪くもスウェーデン、それもマルメというある種隔離された環境で、すくすくと、のびのびと、自分の好きなスタイルの音楽を育んだ者たちならでは、という素直なセンスが本当に魅力的だった。

そんなトーレ・ヨハンソンのお眼鏡にかなった25歳の双子ガール・ユニットが 7ebra 。イネス(ギター、ヴォーカル)とエラ(オルガン、メロトロン、リズムボックス、コーラス)のヨハンソン姉妹。トーレさんとは血縁はなさそうだけれど、この子たちもマルメが本拠なのだとか。

両親がバンドをやっていたこともあり、幼いころから楽器に親しんで育った姉妹。イネスがベッドルームで暇つぶしにギターを弾いているところへエラも参加するようになって 7ebra の原型ができあがったらしい。で、二人での初ライヴをタンバリン・スタジオで披露したところ、その演奏がトーレ・ヨハンソンの耳にとまり、一気にレコーディングの話がまとまった、と。

姉妹はPNKSLMレコーディングズと契約。トーレさんの下でレコーディングを行なうのと並行して、フューチャー・アイランズやダンディ・ウォーホルズのコンサートのオープニング・アクトをつとめたりしながら活動を本格化させていって。

で、いよいよ本ファースト・アルバム『バード・アワー』が世に出た、という流れらしい。双子の姉妹デュオをトーレ・ヨハンソンがプロデュース…ということで、イメージとしてはカーディガンズとかのサウンドをよりキュートに展開したポップなやつかなと想像していたものの。違いました。ミニマルなインディー・ロックというか、ノイジーなベッドルーム・ポップというか、一筋縄にはいかない、内省的で、かつファジーな音がアルバム中に渦巻いている。素晴らしい。

エッジ感と安らぎと、相反する両者を分かちがたくたたえた催眠的で陰影に富んだ音世界に脱帽だ。ウェット・レッグの好敵手的に語られることも多いけれど、カラフルかつマジカルな音の吸引力という意味合いでは、なるほど確かに共通項が感じられるかも。

あくまでも姉妹二人だけによる、余計な飾り付けをいっさい廃したアンサンブルがたまらない。今後、どんな領域へと歩みを進めるのか。楽しみな個性がまた登場したなと胸が躍ります。

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