Disc Review

12 / White Denim (Bella Union)

12/ホワイト・デニム

ちょうど1年くらい前、レイズ・リーガルとの共演アルバムをピックアップしたことがあるホワイト・デニム。

テキサス州オースティンを拠点に、もう15年くらい、ちょいちょいメンバーチェンジを繰り返しながら面白いアルバムをリリースし続けてくれている連中ですが。新作です。そのレイズ・リーガルとの共演作を除いて、2008年のファースト『ワークアウト・ホリデイ』以来12作目ということで、タイトルはずばり『12』。シカゴかよ(笑)。

以前も書いた通り、ホワイト・デニムはサザン・ロック的だったりガレージ・ロック的だったりする音楽から始まって、アルバムを重ねるごとにソウルとか、ファンクとか、ジャズとか、新たな音楽性を積極的に取り入れながら活動を続けてきたわけですが。

今回はバロック・ポップやら、ポップ・プログレやら、カントリー・ロックやら、パブ・ロックやら、より幅広い音楽性にアプローチした感じで。節々にELOというか、ジェフ・リンというか、そんなニュアンスも見え隠れ。楽しい。1970年代半ばのヒット曲コンピ聞いてるみたいな気分。

パンデミック期、中心メンバーのジェイムス・ペトラリがロサンゼルスに拠点を移し、他のメンバーとオンラインでセッションしたり、シカゴのフィノムなど、会ったこともないけれど気になる他バンドに連絡をとって、やはりリモートでゲスト参加してもらったりしながら、ほぼひとりで編み上げた1枚らしい。そういう意味ではペトラリのソロ・プロジェクトとしてのホワイト・デニム盤って感じ?

そんなこともあってか、外に開かれたサウンド・アプローチと裏腹に、内向きの眼差しもアルバム全編を貫いていて。冒頭を飾る「ライト・オン」って曲ではいきなり“暗闇の中でも笑い続けるんだ/冷酷なやつらの前でも笑い続けるんだ…”とか歌っていたり。外向き・内向きの不思議な共存具合がなんだか妙に魅力的です。

もっと素直に突き進んじゃえばシンプルにいい曲になっちゃいそうな局面でも、なんかふと一歩引き返す、みたいな? そんなひねくれ加減も面白い1枚。ホワイト・デニムの代表作になるかも。

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