Disc Review

Real Life Thing / Sam Blasucci (Innovative Leisure/Calico Discos)

リアル・ライフ・シング/サム・ブラスッチ

本ブログでも何度か取り上げたことがある米ロサンゼルスのフォーク/カントリー・デュオ、マパチェ。

デュオの片一方、サム・ブラスッチのソロ・アルバム第2弾、出ました。サムさん、去年ピアノを手に入れたらしく。それをきっかけに1970年代のピアノ系シンガー・ソングライターの影響を色濃くたたえた初ソロ作『オフ・マイ・スターズ』を出して。その後、マパチェでも1枚出して。でもって、これ。すごいスピード感の下、セカンド・ソロ作を完成させてしまった。

今回もレトロというか、ヴィンテージというか、初期エルトン・ジョンとかキャロル・キングあたりを想起させる懐かしいピアノ・ポップ・アンサンブルを基調に、曲によってホーン・セクションやフルートなどをフィーチャーしたり、時にインスト曲などを交えたりもしつつ、軽やかに聞かせている。

ただ、歌詞的には2020年から2022年にかけて、彼自身が大病を患ったタイミングで書かれたものなども含まれているようで。人生について、死について、コーピングについて、いろいろ思いを巡らせている。“太陽の下で花が咲くように/花のように、ぼくも…/春が火の中で死ぬように/春のように、ぼくも…”と歌われる「フラワー」って曲とか、なんだか行間がすごくて。

いくつかの歌詞は『Guidelines For Dying』、つまり“死へのガイドライン”なるタイトルでサムさんが出版した初の詩集に収められていたものだとか。そうした言葉たちがほのかに甘くブリージーなサウンドといい感じの異化効果を演出。いちばんポップでキャッチーなグルーヴを伴った曲に“死”(Death)ってタイトルがついていたり、超メロウな曲が“笑い”(Laugh Laugh Laugh)ってタイトルだったり。軽い捻れ具合が沁みます。

フィジカルは今のところアナログLPのみ。アルバムと同名のコンセプチュアル・コンサート・フィルムも制作されているらしい。どんなかな。楽しみ。

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